とりあえず魔人と遭遇するか
あの後車に乗り込んですぐ、いくつかローレンツと会話をした。
余談としてローレンツ作の薬はひどくまずかった。良薬口に苦しとはよく言ったもので、口に入れた瞬間吐くかどうか迷ったほどだった。
ローレンツとの会話の内容は言ってしまえば王城についてだった。先に魔族がいる可能性がある今、入ってどこに宝物庫があるかどうかわからなければ、完全に出遅れてしまう可能性が高い。ローレンツの話では先ほどの音は、どうも王城を守る結界が崩壊した音だろうということだ。全部で結界は3つあるらしく、一つ目は門に、もう一つは王室に、最後は宝物庫にあるらしい。現在聞こえた爆発音は一度、まだ宝物庫までは侵入されていない確率が高い。
ローレンツの家から王城まではほぼ直線だったので車の全速力ですぐについた。
一同は車からすぐに降りる。ローレンツから一つ忠告を受けていた。その内容は門の壊れ方を見ろということだった、城門が一部崩壊していた場合、敵は一点突破で城門を破っていてそこまでの魔力量はないらしい。ただ城門が完全に崩壊していた場合は相当の魔力量がありかなりの実力だと想定できるらしい。ただ勘違いしてはいけない、どちらにしても通常であれば城門の結界は個人の力で破壊するのは不可能であるらしい。
そして城門は完全に崩壊していた。この場合祈るのは魔族の使う力が魔法よりであることを祈るばかりだ。外に魔人の姿はない、すでに敵は中にいるらしい。
「ハクさん、先に魔導書を確保してください。私は魔族と接触次第戦闘に入ります。私に時間を稼がせてください。」
「エルミラ、城門の件は説明したと思うが大丈夫なのか?」
「わかってます、間違いなく今まででもトップクラスの強敵なんですよね。でも私にもリベンジさせてくれませんか、あの日私はシルエラ様を守らなくてはならなかったのに何もできませんでした。今度こそ戦って勝ちたいんです。」
「・・・わかった。魔導書を確保したらすぐに駆け付ける、死ぬなよ。」
「ありがとうございます。」
エルミラは決意のこもった目で前だけを見ている。
ハクたちは城内に駆け込む、宝物庫は地下にあるらしい。地下へのルートはすでにローレンツに確認してあるのでそこまでかける。
だが宝物庫の前までたどり着いても魔族はいなかった。ハクはそれを確認した瞬間魔力の流れを探る、焦りで周りを見失ってしまっていた。
「これはつけられちゃったみたいだな。」
ハクがそうつぶやいた瞬間後ろの空間がゆがむ。グニャリと景色が歪んだかと思うと、空間に黒い裂け目のようなものができ、中から同じような顔をした二人組の魔族が出てくる。どちらも人間だったら15、6ほどの見た目の少女だ。片方は黒い角に白い髪の毛、もう片方は白い角に黒い髪の毛、どちらも肌は灰色をしていて、白目の部分が黒、黒目が赤色をしてる。服装は真っ黒なゴスロリといったところだ。フリルが非常に多く、ミニスカートの裾から白色の生地がのぞく。
「あらあら、人間が入ってきたのね。どれもまずそうだし弱そうだわ。」
黒い角に白い髪の魔族が首をかしげながら言う。
「姉さま、なら私が食べてしまってもいいのでしょうか?」
白い角に黒い髪の魔族が同じく首をかしげながら言う。
「とりあえず殺してしまってから考えましょう。」
二人が同時に一歩こちらに踏み出す。
「ハクさん、先ほどの約束は覚えていますよね。私が戦います。」
「おいおい一人で二人を相手にするつもりか?さすがに無茶だと思うんだが。」
ハクが共闘を提案しようとした瞬間エルミラはハクの横から消える。魔族に向かって突っ込んでいった後だった。
それを確認した瞬間ハクは宝物庫にトレットを装備して接近する。それを見たマーダスがハクの腕をつかんで止める。
「見捨てるつもりか?一人で勝てるとでも思っているのか?」
「今俺ができる最短ルートは魔導書をもってエルミラを助けることだ。実際そっちの作戦の方が確実だろ、エルミラがやるって言っていたんだ。確かに今のエルミラには難しいかもしれないが、俺は彼女の可能性を信じている。」
マーダスは一瞬迷いエルミラの方に行こうとする。だがエルミラも勇者で凄まじい力を持っていることは間違いなく、マーダスが一瞬目を離したすきに、エルミラも魔族も城内に大きな穴を残し消えていた。マーダスは少し迷った後にハクに向かう。
「・・・。ハク君の言う最短ルートに乗ろうじゃないか。とりあえず、魔導書を取ろう。」
すでにハクは宝物庫の扉に手を触れていた。エルミラのことを信じはいるが心配であることは変わらない。すぐさまやるべきことに取り掛かる。
「この扉をぶち壊したいところだが、中がどういう状況かがわからないいじょう危険だろう。はたしてどうするか。」
「残念ながら私もこの扉を壊さずに開けることはできない。師匠ですらいい方法を知らなかったんだ、どうするつもりだ?」
マーダスはゆっくりと首を横に振りながらいう。
ハクは片手を扉に触れ、目をつぶる。その時マーダスはハクの周りに光の粒が舞うのを見る。
「・・・ハク君は魔素に愛されているようだね。」
マーダスは感心したようにぼそりと告げる。だが過去最高に集中しているハクの耳にそれは届かない。
エルミラも頑張っているんだ、ここで俺が頑張れなきゃいつやるんだ。集中しろ、今自分にできることを全力でやるだけだろ。
ハクの頭上にダイヤルが現れる、そしてそのダイヤルは20回ほど回転する、そしてハクの可能性がさらに芽吹く。
俺の魔法の属性はいまだに何かわからない。正直あれから何度か魔法について練習をしたが特に何か起きたということはなかった。俺には魔法が使えないんじゃないかと思ったこともあった。だが今ならいける気がする。なんとなくいける気がする。
ハクはゆっくりと目を開く。ハクの周りの光の粒がまるで粒子の大きな霧のような量になり、ハクの周りを回るように囲む。その光量からハクの姿を確認することすら難しい。
その美しさにマーダスは思わず見とれる。まるで奇跡を思わせるその様を。




