とりあえず人に会うとするか
「そういえばハクの探し物は一体何なんだ?」
「魔導書だよ、リドルスにあるらしいんだが。そしてその魔導書がおそらくリドルスが浮いている原因なんだよ。だから一応俺たちの目的は同じなんだよ。」
「つまりその魔導書さえ手に入れればリドルスはもとに戻るっていうことか。そんな力を持った魔導書なんてあり得るのか?」
「さあね、俺もよくわからんけど、実際こうなっているのが魔導書のせいなんだからあるんじゃないの。」
「それもそうか。」
車の揺れがどこかここちいい。一同は現在車で移動している、今思えばハク達はリドルスのどこに空の書があるか心当たりがない。だがとりあえず王城の宝物庫に向かっている。魔導書が何らかの形で宝として王都に搬入していることを願っている。簡単に言ってしまえば勘だ。だがただの勘ではない、導かれるもの、勇者エルミラの勘だ。
だがそれは手がかりがないので仕方がない、リドルスにドワーフが残っていないかマーダスに聞いたが、残ってはいないらしい。一度ドワーフに確認できれば話が早かったのだが仕方がない、おそらく魔族との競争になるだろうし、手当たり次第に探している状況だ。
「へぇ~これがリドルスか~なんというか、技術レベルが全体的に低いな。」
エルミラが車の窓を開けて外を見る。
「でもなんというか全体的に趣があってかっこいいですよ。」
エルミラの言うこともなんとなくわかる。具体的に言ってしまえば、この国の建物はそれぞれ石造りのものだ。装置的なものはあまり目につかず、ただ普通に街灯とかは立っていて、夜でも比較的に明るいだろう。
「王城までの道はこれであってる?」
「あぁあっているよ。このまままっすぐだ。」
マーダスは一度リドルスに来たことがあるらしく、道順もお手の物だ。
「この国は昔から鉱石や、それによる生産物で成り立っていてな。魔法科学が発展するまでは世界の最先端兵器は大体、リドルス製だったものだよ。」
懐かしそうにマーダスが語っている。
「マーダスはよく来ていたのか?」
「そうだな・・・。まぁ話すと長くなるから短く言うがこの国には私の師匠がいるんだよ。ここ最近は会ってなかったし、カンタレラに流れ込んできたドワーフの中にもいなかった、どうしていることやら。」
師匠がリドルスにいたのか。それでカンタレラには来ていないってさ・・・・?
「あれ、それ師匠まだリドルスにいるんじゃない?」
「いると思いますよ。」
唐突にエルミラが言う。
「え?なんでエルミラが知ってるの?」
「見えるからですよ。」
「師匠が?」
「いいえ、生命反応がです。」
「え・・・?初耳なんだけどそれ何の話?」
「あれ・・・?当然知っているものかと思っていました。勇者は人類の守護者なので人限定で離れていても生命反応が見えるんですよ。トレットさんから聞いてなかったですか?」
「聞いてないよねトレット。」
「話すの忘れてたぞ。」
勇者の能力、得点のひとつで、先ほどエルミラが説明した通り、人の生命反応という物が遠くからでも見ようと意識すれば見えるらしい。サーモグラフィーのような感じに見え、その人が元気であれば赤くみえ、弱っていれば青色に見える。病気なども判断できるらしい、近くで見れば弱っている部位まで正確にわかるらしい。
「そんな便利な能力があるのか。もっと早く聞けばよかったわ。」
「ちなみに師匠、というかその人は今何色に見えるんだ?」
「赤色ですが、どこか焦っているような、そんな感じです。」
「それはあんまよくないんじゃないの?どこにいるんだ?」
いま焦る要因といえば高い確率で冒険者チームを抹殺したもの、おそらく魔族に絡まれている可能性が高いだろう。
「頼む、師匠には恩があるんだ。早く向かってくれ!」
マーダスも焦る様子でハクに懇願する。
「みんなつかまってくれ!速度制限ガン無視で行くぞ!!!」
ハクはさながらレーシングカーの如きドリフトで道を走り抜ける。エルミラは要所要所で道の指示を出す。
「この道は確かに師匠の家に向かっているな!もう間違いない!」
ハクはさらにアクセルを踏みしめる。この速度で車をコントロールすることは普通の人ではまず不可能だろう。そもそも異世界の車は地球の車よりも速度が出るようだ。ハクは限界いっぱいに車で走る。
およそ5分ほどで車は件の家に到着した。マーダスは速攻で車から降り、師匠の家に駆けこむ。
「大丈夫ですか!?師匠!!!」
「こ、この声はマーダスか!?く、来るな!!!来てはならない!!!」
一方車の中でなぜかエルミラは動かなかった。ハクもそれを疑問に思い車にとどまっていた。
「どうしたんだエルミラ?」
「これは・・・腹痛ですね・・・。」
「え・・・?」
その瞬間家から打音量の絶叫が聞こえる。
「う、うぁぁぁぁっぁぁぁぁぁ!!!!」
ほかの効果音は言うまでもないが、聞くに堪えない音だったとだけ伝えておこう。




