とりあえず協力するか
「それじゃまさか他国が冒険者チームについて調べる時に、あの坑道に魔物がいなかったという事実を隠ぺいするために魔物を呼び込んだのか?」
「ふむ、そういうことだな。実はもう一つ狙いがあるんだが、そもそも私はリドルスに行くことになるのを想定していなくてな、そのせいで転移する魔石の用意もなかったんだ。だから隠ぺいのついでにあの坑道をダンジョン化したというわけだ。」
「おいおい、はた迷惑なやつだな。もしもリドルスを取り戻しても、あの坑道があんな状態じゃ意味ないだろう?」
「そこが問題なんだ。あそこまで魔物が集まってしまうのは私も想定外だった。今までも何度もダンジョン化を行ってきたがあんなのは初めてだったんだ。」
マーダスは腕を組んで首をかしげる。そうすると彼女の体のある豊満な部分が強調される、それを見たハクが生唾を飲み込む、そしてさらにそのハクをみたエルミラが指の骨を鳴らす。さらにそれをみたハクは急に真剣な顔になる。
「待てよ、そもそもダンジョン化なんて簡単にできることなのか?」
「ふむ、できるできないは棚に上げると、望まれる技術ではあってな。ダンジョン資源は世界規模で見てもかなり重宝されていてな。ダンジョンという構造上危険なのは仕方がだないことだが、それでもそこからとれる魔物の強力な部位や、生物の循環によりできる純度の高い魔石といった、優良なものが大量にとれるんだ。ちなみに私はダンジョン化の第一線研究者で、実験段階までは到達している。今回はちょうどいいと思って利用させてもらったんだ。少しは反省もしている。」
「っていうとただの失敗ってことなのか?」
「いや、ダンジョン化そのものは成功している。想定外のパターンだっただけだ、同じパターンでの実験は完璧だったために、少し不思議ではあったがな。」
「実験段階の技術なんてそんなものだと思うぞ。」
ここでトレットが口を挟む。おそらく大魔女王のもとで、何度も実験の失敗を目にしているのだろう、今の発言をするときに少し遠い目をしていた。正直実験段階の技術に失敗はつきものだと思う、だがあの坑道の魔力の流れは何か違和感があるように感じた。些細な問題かもしれないが、それが何か重要な気がしてならない。
「とりあえず私も困っているのは本当なんだ。よければ協力してくれないか?」
ハクは少しだけ考えた後きっぱりと告げる。
「正直に話してくれたのは助かる。だが協力はできないな、話を聞いてみると損をするのはドワーフだけじゃないか。カンタレラの有利な条件での同盟、そこらへんが納得できないから遠慮しておきたいな。」
「つまりかりにこのリドルスを取り戻すことができても、そのままドワーフに返すってことか・・・?」
この瞬間マーダスの目つきが変わった。先ほどまでの冷静な雰囲気から、冷徹な雰囲気に変わった。それもそのはずだろう、これではカンタレラの敵に回ると宣言しているようなものだ。
「そういうことになるな・・・。」
「私がただの研究者ではなく、名のある冒険者であると知っていての言動なんだろうな?」
その時、あたかも気温が数度落ちたかのような寒気がハクの体を通り抜ける。マーダスの実力を疑っていたわけではないが、魔力の流れがつかめるようになったハクは、マーダスから思わず冷や汗をかきたくなるほどの力を感じる。だがそれでもハクはまるで何も感じていないかのように堂々と宣言して見せる。
「当たり前だろ。俺は俺の信じる道を行く、お前が誰で何だろうが関係ない。力のないものが淘汰されていくのを黙って見てられるほど俺も大人じゃないんでね。」
その時マーダスはただただハクに見とれていた。別にマーダスのようにすごんだわけでも、威嚇したわけでもない。ただただ口から言葉を発しただけだった。それなのに、ハクの瞳から一切の邪念を感じず、何が起ころうとも己が信じる道を曲げることはないという決意を感じたのだ。
「くくく、はっはっは。あぁ~面白いな君は、正直私もカンタレラにはうんざりだったんだよ。私の研究に金を沢山くれるが、こうして人使いが荒いだろう?だからね、今回無事にリドルスを取り戻せたらリドルスのマルセナリオになろうと考えていたんだよ。リドルスにはSランク冒険者のマルセナリオはいなかったはずだからね、重宝してくれるだろう。それに何より件の坑道の資源、まぁ言ってしまえばミスリルに用があってね、あれはドワーフじゃないと繊細な加工は無理なんだ。この機会に良縁を結ばせてもらいたいと考えていてね。」
「ふむ、なら安心して協力できそうだな。」
ハクは立ち上がりそっと右手を差し出す。
「よろしく頼む。」
マーダスはハクの手を強く握った。
トレットはこの時なんとなくマーダスの顔が赤らんでいる気がしていたが、日差しのせいだろうと気にするのをやめた。




