とりあえず会話するか
「リドルスについたのか?」
「それは着くに決まっている。転移魔法陣を使用したのだから。」
白衣の女性は服についたかすかなほこりを払いながら告げる。
「ぼぉ~~~~~、ハグざんわだじぼんとうにごわかっだんでずがら~~~。」
エルミラが大泣している。
「ごめんな、俺も焦ったたんだ、許してくれ。」
「おようふくがっでぐれだらゆるじまずぅ・・・。」
ちらちらとエルミラがハクを見ている。
「わかったよ、買ってあげるから泣き止んで。」
「わかりまじだ・・・。」
まだ鼻をすんすんとさせているが、エルミラは少しずつ立ち直っているようだ。
ハクがここをリドルスと判断できなかったのは無理もない、ここはリドルスの門から少し離れたところだ。地面に魔方陣はない。
「なんでここに転移したんだ?」
白衣の女性が腕を組んでこちらを見ている。目も髪も綺麗な青色をしていて、肌は美白のスタイル抜群な女性だ。
「正規の手順を踏まなかったらこうなったたんだ、まったく少しは人の話を聞かないか。」
「それはすまなかったな、俺の名前はハク、こっちはトレットで泣いてるのはエルミラ。そっちは?」
トレットはいつの間にかガントレットから元に戻っている。
「さっきまでその犬いたか?まぁいい私はマーダス・エルドア、研究者をしている。お前たちはなぜリドルスに来たんだ?」
「俺たちは探し物があってな。ちなみになんでこの島が飛んだか知っているのか?」
ハクは目的がかぶり争いになると面倒なので、念のために空の書を知っているかどうか確認する。
「それを調査するのが私の目的でもあってな、転移する準備を進めていたのだがそれをお前らが台無しにしたんだ。」
「・・・それは申し訳なかったな。でもあの転移魔方陣まで行って、なぜ起動しなかったんだ?」
「古い魔方陣を何も考えずに起動する馬鹿があるかっ!お前らが異常なんだよ!!」
「そうなんだ・・・すまん・・・。でも魔物が大量に出るあの場所に一人で調査に来ていたのか?」
「当然の疑問だな、あの坑道に私が行った時はそもそも魔物なんていなかったんだよ。」
「おいおいまじかよ?それ言って大丈夫なのか?」
「もちろんだめだ、ここだけの秘密にしておいてくれ。だがお前たちには正直に事情を説明するから調査の手を貸してほしいんだ。私が魔物を大量に呼び込んだあの坑道をものともせず駆け付けた君らなら心強い。」
「う~ん、とりあえず目的は同じかもしれないけど話を聞いてもいいか。ていうかあの魔物たちはあんたが呼び込んだものだったのか、ちょっと信用できないな。」
「それもそうだな。説明するから聞いてくれ。」
そういうとマーダスは地面に胡坐をかいた。ハクはそれに習い向かい合わせに座る。
「それでは説明しよう。まず大前提であの坑道に魔物が出るというのは当初でまかせだったんだ。リドルスの近隣国家である、【カンタレラ王国】が流した出まかせで、狙いはあの鉱山だ。」
「なるほどな、なんとなく読めてきたよ。」
「まぁ聞けよ。たぶんお察しの通り、私は研究者でもあるが同時にギルドに所属する冒険者で専属冒険者つまりマルセナリオなんだよ。そもそもカンタレラ王国は、他の近隣国家があの坑道に近づかないように魔物が出るという出まかせを流したわけなんだが、その発想に至った理由があってな、打ちあがったリドルスの地に住まうドワーフが転移魔方陣を使って地上に戻った後駆けこんだ国、それがカンタレラ王国だったんだ。坑道が欲しかったカンタレラはドワーフたちの件を他国には秘匿した。ドワーフだけじゃ打ちあがったリドルスを取り戻すことはできない、そもそも原因がわからなかったからな。そこでカンタレラ王国はリドルスをドワーフに返すから疑似的に坑道をくれと要求したんだ。これはまぁ当然勝手に坑道の所有権を主張すると最悪の場合他国との戦争になる可能性もある。つまり逃げ込んだドワーフ達に半ば強引にカンタレラ王国に有利な条件で、同盟を組んじゃおうって提案したわけだな。他国を頼る選択肢もあったが、頭のあまり良くなかったドワーフたちはこれに同意しちゃったってわけよ。」
「待てよ、それじゃぁあんなに魔物が坑道にいた説明になっていないぞ。」
「問題はそこからだ。ちょっと複雑なんだが、まず他国が本当に坑道に魔物が出るのかと疑って坑道に冒険者のチームを派遣したんだ。そしてその調査中に冒険者たちは死んだ。私はその件についての調査もするために坑道にいたんだ。そして坑道の最奥まで何事もなくたどり着いたというわけだな。」
この時点でハクはある程度察する、そう最悪の事態を。そしてハクは口を開いた。
「まさかとは思うけど、違うと信じたいんだけど、坑道で冒険者を抹殺した何者かがリドルスに転移している可能性があるとか考えてる?」
ハクは肝心な部分は隠して確認しているが、話を聞く限り現状リドルスにカンタレラ以外で行く必要があるものの狙いは空の書である確率が高い。そして簡単に高レベル冒険者チームを殺していることを考えると、邪神の手下の魔族である確率が高い。
マーダスが察しのいいハクの発言に関心したような顔をする。もちろん空の書について知らないマーダスは魔族について察しているわけではない。
「そのまさかだな。坑道には誰もいなかったんだ、つまり殺人犯はここにきている可能性が高い。私は最奥でその調査結果をギルド長に報告したんだ、通信魔法でな。そしたらギルド長はそのまま金儲けのために殺人犯の追跡だけではなく、リドルスを取り戻す方法も調査してほしいと依頼してきたんだ。」
マーダスは両手を肩まで上げてやれやれといったポーズをとる。対してハクは考えるように顎に手を当てている。
「話を聞いているとあんたは随分と信頼されているんだな。」
「なんだ名前を聞いても反応しないと思ったら私を知らないのか、潜りだな。最強冒険者10選にも乗ったことがあるんだがな。」
そうか確かにあったわ、稀代の魔光師マーダス・エルドアその人でしたか。




