とりあえず移動するか
「元リドルスってあんまり遠くないんだな。」
「ナビに出てる通りだな。」
ハクたちは現在無事にリドルスに向かっている。サントレア王国は観光業が盛んだといっても大図書館以外にめぼしい観光地はなかった。だからサントレアを出発してリドルスに向かう現在に至るというわけだ。
「それにしてもこの車の乗り心地いいね。」
ハクは開いたま窓に肘をつきながら機嫌よさそうに言う。そしてそれを助長するかのように窓から吹き込む風がハクの髪の毛を景気よく揺らす。
「そうだな揺れが少なく、向こうにはない乗り心地だろう。」
「本当だよ。この世界は道路もめちゃくちゃ広いし、最高だな。」
揺れの少ないおかげかエルミラも心地よさそうに後部座席で眠っている。まだ少しだけ子供らしさの残るエルミラの寝顔は勇者であることを感じさせない。そんなエルミラの姿を少しだけ見ていると、まるで彼女が勇者であることを伝えるかのように銀色の髪が太陽光を反射する。
トレットに車について質問をすると、どうもタイヤに無属性魔法の【バイブレイション・メティケイション】という魔法の魔方陣が記されていて、魔力炉に魔力を通すと、そこから魔力を得て魔法が発動する仕組みになっているようだ。このようなものを広義的には魔道具というらしい。そこから分類される、魔力をすでに持っていて魔力が続く限り発動する魔道具が【魔畜具】、それと外部から魔力を得て魔法を発動する【魔法具】と別れる。この場合の車は魔法具に分類される。
どうもリドルスが飛びあがったのは車がこの世界に普及するする前だったらしい。確かに、リドルスに車があったなら移動型転移魔方陣なんて考えなかったかもしれない。つまりリドルスまでつなぐ道には残念ながら道路がない、サントレアを出てしばらくは道路を走っていたが現在は舗装されていない道を走っている。だがこの車は驚くほど揺れない、異世界の魔法がここまで現在の技術のいいとこどりだと、あらゆる人間が魔法を夢に見る理由にうなずきざるおえない。
出発してからしばらくたち、ハクたちは道中に何もなくリドルス付近まで到着した。そこからは車をエアシェルターにしまい歩いて移動している。
「グルァッ!!!」
「てりゃッ」
「ギャヒンッ!?」
先ほどから魔物がよく出るようになり、このやり取りが何度も繰り返される。この世界に来てここまで沢山の魔物に会うのは初めてのことだった。だが先ほどからエルミラが現れる魔物を時に魔法で、時に黄金の剣で、それはもうバンバン倒しまくる。依然ハクの出番はない、だがハクもどのような魔物がいるのか気になるらしく、トレットにどういった魔物か聞きながら移動をしている。
「フッフッフ・・・ハクさんどうですか私の強さは?驚いて声も出ない様子ですね・・・ですが驚くのはこれからですよ!!!これが私の新しい雷魔法【ライトニング・ボルテックス】!!!!」
エルミラが標的にした魔物の周りにバリバリッという音がしたかと思うとすぐに雷の渦が発生し、その恐ろしい雷が鳴りやむと中から息絶えた魔物が黒焦げになって現れる。
「確かにすさまじいな、エルミラさんマジパネェっすわ。」
ハクはエルミラの舎弟のような感じになって、無事尻に敷かれたイエスマンと化している。
「エルミラよ、あまり音を立てるとほかの魔物を寄ってくる場合があるから感心しないぞ。」
「あ・・・そうですよね、すみません。」
いつの間にかこの一同の力関係はトレットを頂点にエルミラ、ハクと続くような感じになっている。
ハクはトレットを装備していないときは、正直そこまでの実力を有してはいない。それに引き換え勇者になったエルミラは大量の力を有し、実質最強レベルの力を持っているのだ。このような力関係になるのは仕方ない。もちろんエルミラもハクとの決闘でハクの実力を認めている、だがこのような力関係になるのは仕方がないのかもしれない。
と、普通ならばなるはずだが、このハクという男は普通ではない。
エルミラがトレットに謝っているとエルミラの後ろに、魔物が現れる。エルミラに気付いた様子はない。その魔物は一言で言ってしまえば黒い牛だ。だがただの牛ではない、名前は【メタルインヴァーシ】。ギルドが討伐隊を組むのであればSランクに到達する化け物中の化け物だ。人々はこの化け物を黒鉄牛と畏怖を込めて呼ぶ、文字通り黒い鉄の牛だ。
その存在にエルミラがようやく気付き、振り向きざまに剣を薙ぎ払う。
だが結果はギャインッという金属と金属が当たる不快な音がしただけで、メタルインヴァーシは無傷だ。
「クッ!?硬いですね。」
エルミラが一度距離を取ろうとした瞬間、牛は口を開ける。
「まずい!?エルミラ避けろっ!!!」
トレットが大きな声で必死に警告する。この牛が黒鉄牛と呼ばれる所以はもう一つある。口から爆発する黒い鉄の塊を発射することができるのだ。この技の威力を一言で表現するなら、小規模な隕石だ。
だが今回その技は発動せずに終わる。
ハクがまるでコマのような、人間が決して到達できない速度で縦回転しながら宙から落ちる。そしてその勢いをそのままに、メタルインヴァーシの頭を蹴り砕いた。
エルミラがあまりの驚きに声をかすれさせながら声をこぼす。
「身体・・・強化魔法ですか?」
「え・・・違うよ、魔法結局習ってないし。」
「違うなら今のは何なんですか。」
「オスカーから魔力の流れを教わっただろ?だから体内の魔力と空気中の魔素を縦にぶん回して、当たる直前に魔力で足をコーティングしたんだ。」
トレットはまるでもう飽きたかの様子で頭を後ろ足でかいている。
「そんな馬鹿な、つい最近教わっただけじゃないですか。ていうか教わったのはそもそも魔力の流れでだけなのに・・・それは別の話ですよ。それに私の気のせいじゃなきゃそれも結局魔法ですよ・・・。」
エルミラの言う通りハクが使った技術はハクが気付いていないだけで魔法だ。【デュールコート】という部分的に体を硬くする魔法と【マジカルマリオネット】という本来であれば傷ついた体の部位を魔力で強引に動かす魔法だ。どちらも無属性魔法で上位格の魔法だ。そもそも無属性魔法というものは適正なく使える魔法だといっても魔法は魔法、上位格の魔法を使用するには相応の修練と才能が必要だ。そして付け加えるならばどの魔法を組み合わせてもメタルインヴァーシを生身で砕くなんて離れ業は普通の人間ならば行わない。
それからたまにハクも戦いながら、一同はリドルス付近の洞窟に到着した。
新しく小説書いています。
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【king G】~神で魔王な俺は同時にGでもある~
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