なんだかんだで魔法は使えるらしい
「ふ~む、どうするかのぅ。ハク君の属性なんじゃが近い反応は真属性じゃのぅ。わしも見たことはないが真属性の上位属性かもしれん。」
オスカーは額に少しだけかいた汗をぬぐいながら告げる。
「え?それってめちゃくちゃすごいことじゃないんですか?」
「そうじゃのう、わしも真属性を発展させてなに属性になるのかは知らんのじゃ。ハク君は自分で旅しながら魔法の使い方を学ぶのが一番かもしれんのう。結局何事にも開拓者がいるわけじゃし、君にはそれになってほしいんじゃよ。というかわしにも教えられんし。」
「わかった、まずはじっくり魔法に向き合うことにするさ。今のところ時間は余っているし。ちなみに魔力の練り方だけは教わることは可能か?」
そもそも基礎すらよくわからないからな。これじゃ何を練習するのかさえよくわからん。
「それぐらいならばお安い御用じゃ。魔力を練るのは非常に簡単での、まずは自身の体の中の魔力を感じることじゃ。先ほどの魔計紙の反応から考えて二人とも魔法の才能が凄まじいことは間違いない。あとはセンスがあるかどうかじゃのう。やり方としてはまずは胡坐をかいてもらってもいいかのう。」
「わかった。」
「わかりました。」
ハクとエルミラはこの狭い部屋で二人並んで胡坐をかくスペースを見つけることができない。
「ほっほっほ、ここは確かに狭いかもしれんの。」
そういうとオスカーは手に持っていた杖を一度床にトンッと打ち付けた。そうすることによって、先ほどまで狭かった部屋の中の構造が変化する。ものの数秒で部屋は拡張され、先ほどまでのおよそ20倍程度の広大なスペースへと生まれ変わった。
「す、すごいです・・・。」
エルミラが結構驚いているな、やっぱりこの爺さんは規格外なんだろうな。地球でこんなのやられたらたまったもんじゃないし。
「ほっほっほ。エルミラちゃん惚れちゃったかのう。」
爺さんは機嫌よさそうにしている。
「いえ、それは何があってもないと思います。」
爺さんは悲しそうにしている。
そしてその様子のまま指示を出す。
「それではエルミラちゃん、ハク君これで正座できるかの。」
明らかにエルミラの冷たい反応の影響で当初ととれと言われた姿勢が変化している気がするが、ハクとエルミラはその指示を無視しお礼を述べると、二人並んでそこに胡坐をついた。
「そうじゃないんじゃよ、わしの説明がわるかったのう。二人とも向かい合うように胡坐をかいてほしいのじゃ。」
一瞬胡坐を指摘されたのかと思ったがそうではなかったようで、ハクとエルミラは姿勢を変え向かい合って座りなおした。
なんだかエルミラの顔をこうして面と向かって見るのは決闘以来だな。綺麗な顔をしているけど、勇者になる前から十分綺麗だった。もしもあの時俺がもっと早く駆け付けていれば、エルミラは変わらずにシルエラのもとで笑っていられたんだろうか。
ハクがそんなことを考えていると、エルミラは珍しく何かを察したようにハクを見つめる。
「それでは二人とも手を握ってもらってもいいかの。」
少しだけ申し訳なさそうにしているハクの手をエルミラの方から握り、優しく笑いかけた。エルミラがハクの手を包み込むように握っている。
二人を見るオスカーの目は相も変わらず、優しい目をしていたが、どこか憂いがあるようなそれでいて昔を懐かしむようなそんな目でもあった。
「ようはこういうのは初めが肝心なのじゃ。最初に正確な魔力の流れを学んでおけば、後はそれを磨いていくだけなんじゃ。なのでこうするんじゃよ。」
そうしてオスカーはハクの手を包むエルミラの手に、自身が持つ杖についた水晶のほうをあてた。
「この感覚を忘れるでないぞ。」
ハクとエルミラの中にオスカーの魔力が巡る、それは二人の魔力を刺激し、徐々にオスカーの魔力は薄れ、二人の魔力だけが手を伝って、体内を循環する。まるで自身の体の中に、流れゆく一筋の川が、ゆっくりと頭の先から手の先まで循環するようだった。
エルミラはつぶっていた目を開く。
「なるほど、これが魔力の流れ。魔法自体はいつも使っていましたが、体の中のエネルギーを押し出すことしか考えていませんでした・・・。」
「それではいつまでたっても強い魔法は使えんよ。ちゃんと理解することじゃ。魔法のことも、そして何より自分のことも。」
エルミラはハクの手を握ったままだったことに気付いて、少しだけ照れながらハクの方を見る。だがハクは相も変わらず目をつむったまま、ただただ深く集中しているようだった。おそらく先ほどまでのオスカーとエルミラの会話すら聞こえてはいないだろう。
そんなハクの姿をエルミラとトレット、それにオスカーが見つめる中。ハクの周りからそれはそれは小さな光る粒が浮き出初め、ハクの周りを循環していく。その光の粒の幻想的な様子に一同は見とれる。
「これは・・・。まさかここまでの感覚を最初から持っとるとはのぅ。本当にやってくれる。これは空気中に漂う魔素を体内に循環させているのじゃ。そしてそれだけでは魔素は光ったりしない。歴史上で大気中の魔素が光っていることを確認できたのは一度、それは一匹の竜の周りじゃったそうな。大気の魔素を光らせた竜はそれ以来光竜と呼ばれたそうじゃ、そして学者の内ついにその現象を説明できたもんはおらんかったのじゃ。じゃがとある爺さんはその現象を聞いてこう答えたそうな、【魔素に愛されるもののみが魔の深淵に触れるとな。】」
「魔素に愛される?」
「そうじゃ、わしも詳しくは知らんがの。その爺さんはそういって消えたのじゃから。」
そしてハクが目を開けた。
「これが魔力か・・・。なるほど、面白いな。ありがとう爺さん、これからもしっかり練習するよ。」
「そうかいハク君、しっかりと励みなさい。」
おそらく君には大変な未来がまっておるでのぅ。その封印といい本当に不思議な子じゃて・・・?そういえば少し前に、古い知り合いが来て「面白い未来を感じるので止めてくる」とかわけのわからんことをいっておったのぅ。あいつは元気じゃろうか。
「これを持っていきなさい。」
爺さんがペンダントをこちらに手渡てきた。
「これは?いいのか?」
「年寄りの気遣いは素直に受け取るもんじゃぞ。ちなみにそれが何かは秘密じゃ、いつしか役に立つこともあるじゃろう。」
「ありがとう、受け取っとくよ。」
「もう行くのかのう?」
「あぁ行くことにするよ。」
そうしてハクたちは大図書館へと戻った。
「面白い若者たちじゃなぁ・・。わしも昔は冒険なんてしたものじゃ。ほっほっほ。」
そういって笑うオスカーの周りに光の粒が舞う。




