作戦会議だよねー
「なるほどね、大体理解できたよ。」
ノイルは二人の話を聞いて静かにうなずいた。
余談だが今日話しているのはゾーイのアジトではあるが、ゾーイの部屋ではない。
このアジトには全部で地下室が三つあり、そのうちの一つに今ハクたちはいる。
ゾーイから事情を聴くと、どうもゾーイはもともとここら辺のブラックマーケットのいくつかを経営する元締めだったらしい。
奴隷上がりでそこまで到達して、自分で骨董品の魔法具を売ったりして生計を立てていたそうだ。
ここはその商店のうち一つを政府との交渉で国がゲートを管理するための施設にしたらしい。
ゾーイは地下でアルドでブラックマーケットをする以上、ここの国とのコネクションをいずれ作らなければいけないと考えていた。
ゾーイはこの交渉を飲み、アジトの一つを管理施設として提供したのだ。
マリトルムが他国にこの広大な地下空間を秘匿していた理由は簡単で、古代超文明が作り上げた膨大な魔法具を研究し、自国の軍事力として活用しようとしていたのだ。
もちろんその国の思惑はうまくいったが、足りないものがあった。
それが資金だ。
国はどうするか考え、秘匿した空間を使用してブラックマーケットの経営という手段をとった。
もともと古代超文明が使用していたすべての魔法具が軍事力として使用できるわけではない。
だが失われた素晴らしい技術が使用されていて、価値があるのは誰の目から見ても明らかだった。
これがマリトルムの、アルド・ブラックマーケット誕生秘話だった。
後にこの国が発展して、ブラックマーケットが必要なくなるほどの資金と技術力を得る。
だが国はブラックマーケットを放棄することはなかった。
この莫大な利益を生み出す市場を放棄することは、今後を考えてもデメリットしかなかった。
だが、経営するほとんどの市場を市民に明け渡しのは事実だった。
ブラックマーケットには表のマリトルムとは違い法外な税金がかけられていた。
うまく商売をすればこの税金をクリアすることは難しくはない、だがうまく商売をできないものもいたのだ。
そういった者たちをどうするかと言えば、国外に逃がすわけには行けない。
ブラックマーケット自体が国に関わる極秘情報なのだから。
国は思いついてしまった、悪魔の手法を、それが奴隷制度だった。
税金を払えなかった者たちは奴隷になる、そしてただでさえ自由のないこの地下空間でさらに自由を失う。
ゾーイの手首にあった奴隷紋の効果は単純だ、刻まれたものの魔力を使用して、隷属と、国外に出た場合記憶のすべてを失うという力が込められている。
裏の住民は晴れてブラックマーケットの商品の一つとなったのだ。
そして近々、古代超文明の研究が終了するらしい。
つまるところ、マリトルムが莫大な軍事力を手に入れるということだ。
レジスタンスは単純に奴隷制度に対する、怒り、悲しみ、憎しみで国を滅ぼそうとするの根源にある集団だ、だからこの国に魔人を招き入れたのだろう。
だがゾーイは少し彼らとは毛色が違った。
古代超文明の武力による他国の侵略、国土の拡大が目的らしい。
それ自体はあまり珍しくはない、だがこの国の経営方針を考えるに、侵略した他国が幸せになるとは考えにくい、おそらくは悲惨な末路を遂げることだろう。
ゾーイは悲しみの連鎖を断ち切りたいと考えていた。
「だがどうやって魔人をこの国に招き入れたんだ?」
「単純だよ、真正面からさ。魔人は人間に完璧に擬態できる。あとは中に入った奴らが、転移陣を築き上げれば侵入し放題ってわけさ。」
なるほど、確かにそう言われれば、ハクはノイルに告げられるまでこのアルドに魔人がいることに気が付かなかった。
「こうなるとノイルが言っていた、この国を落とすには魔人が多いっていう理由も見えてきたな・・・。」
「そうだね、僕もそう考えていたよ、つまり魔人の狙いは古代超文明が残した兵器とその研究成果ってことか・・・。」
ハクはゾーイの方を見た。
「おそらく魔人はほおっておけば少なくともゾーイの目的は果たしてくれそうだぞ。」
ゾーイは呆れた表情でハクを見つめる。
「魔人が武力を手にして得する未来があたいには見えないんだけど。」
「それもそうだな。」
ハクは軽く笑うと、今度はエルミラとノイルの方を見た。
「どうもきな臭くなってきたから、俺的にはさっさとマスターの頼みごとの方を優先したいな。」
「とりあえずゾーイから計画を聞いてからでもいいんじゃない?」
ゾーイは話を振られ口を開いた。
「とりあえずあんたたちの内誰かには大会に出てほしい。」
「大会?」
「そうさ、地下闘技大会っていうのが開催される。そしてそこにはこの国の重鎮が見に来るのさ。」
「国の重鎮が見に来るからどうだっていうんだ?」
「知っているものは少ないと思うけど、あたいが今言った重鎮、フェリクス・アーカイブはこの国の影の帝王、というか単純にこの国の国王よりも権力を持っている男さ。」
ハクはゾーイの話に口を挟んだ。
「闘技大会にのこのこ来た影の帝王を暗殺することがお前の作戦か?」
「それも悪くない、でも今回は違う。のこのここの国の帝王が出てきてくれるのは確かにありがたいけど、フェリクスが出てきてくれるおかげで景品が豪華になるんだよ、闘技大会のね。」
「その景品ってなんだ?」
「奴隷解除紋さ。」
「・・・奴隷解除紋?仮にそれが手に入ったとして誰に使用するんだ?」
「妹だよ、あたしの。」
「自分かと思ってたよ。」
ゾーイは自分の手首にある奴隷紋に目を落とした。
「あたいが一つ店を手放す時に、この奴隷紋の効果をなくすのを条件にしたのさ、今でもこれを残してるのは奴らへの恨みを忘れないため残しているだけさ。」
「だったらなおさら誰のための奴隷解除紋なんだ?」
「あたいの妹さ・・・。」
「ゾーイに妹?あんまり助ける気は起きないな。」
ハクは一瞬で腹を殴りつけられた。
「・・・あたいの妹を助けてほしい理由はただ一つ、あたい達が末裔だからさ。」
「末裔?」
ゾーイはハクにそう告げると静かに洋服を脱ぎ始めた。
ハクは仕方なくそれを横目でめちゃくちゃ見つめた。
そのハクを軽蔑した目でエルミラは見た。
ゾーイが洋服を脱ぐと、背中一面に刺青がある。
ノイルはその刺青を見て目を見開いた。
「その刺青というか紋章、確か博物館で似たようなものを見た。」
ゾーイはノイルの方を見て笑った。
「そうだろうね、あたいと妹は唯一の生き残りだから、古代都市:バドルドラのね。」
一同は驚愕の表情へと変貌する。
「仮にそうだとしてなぜ妹の奴隷紋を?」
「私たちは一人一人がカギになっている。ある古代兵器のね、そしてその古代兵器が最強なんてのはもう想像できるだろう?二人の血液がそろえばそれは発動するのさ。」
「待てよ、もしそれが本当ならこの闘技大会自体が片割れを探すためにフェリクスが開いたものなのか?」
「その通りだ、だからあたいは大会に出たくない、だけど妹も助けたい。」
「なるほど、妹はすでにつかまってるのか。」
「奴隷紋のおまけつきでね。」
「なるべく闘技大会中に妹は奪還したい。だから闘技大会を優勝して景品を入手する前には妹を取り戻したいんだ。」
「まぁ考えはわからなくもない、おそらくは闘技大会中が一番好きが大きそうだしな。妹の居場所はわかっているのか?」
ゾーイはにんまりと笑う。
「もちろんさ、妹の居場所には目を付けてあるよ。」
「よし、その作戦に乗った。」




