レジスタンスだよねー
「問題は魔人がどう出るかだな。」
ハクはレジスタンのザダンの方を見た。
だが口を開いたのはノイルだった。
「そういえば罠にはまる寸前、魔人が人の沢山いる建物を訪ねていた。あれはレジスタンスってことで大丈夫かな?」
「場所は?」
あの時重要な建物である可能性があったのでZEROが地図機能でメモを残してくれたらしい。
ノイルは携帯を開き、画面をレジスタンスに見せた。
「その場所は間違いない、俺たちの基地だ。でもなんで魔人がそこによるんだ?音信不通になっていたのに。」
ハクとノイルは眼を見開いた。
「俺は今すぐレジスタンスのアジトに向かう、ノイル、エルミラはゾーイと作戦会議を続けていてくれ。」
「了解した。」
エルミラとノイルはうなずいた。
「トレット、一緒に来てくれ。ザダン、お前もだ。」
ハクは足早に建物を出て行った。
そして数十分の移動の末、すぐにレジスタンスのアジトに着いた。
ハクはザダンの方を見る。
「最悪の場合は覚悟しておいてくれ、もう魔人たちは動き始めているみたいだ。」
ザダンは生唾を飲み込んだ。
ハクは扉を開けようとしたが、鍵が閉まっていてなかなかあかなかった。
仕方なくハクは扉を蹴り破った。
扉を開ければハクの鼻を濃厚な血の匂いが刺激した。
「やはりな、普通に考えて奴らも行動を開始するなら、邪魔になるのは自分たちを知っているレジスタンスだろう。こうなるのも仕方ない。」
部屋の中には死体が転がっていた。ザダンの表情を見るに、レジスタンスで間違いないだろう。
「・・・。」
昔の経験上ハクも大事な誰かをなくしてしまったことがあった。
次々にザダンの目元から流れる涙を見ないでおいた。
ハクは建物内を調べ始めようとした。
だがそのタイミングでザダンが口を開いた。
「俺たちは過ちを犯したのか?」
その独り言のようなつぶやきに、ハクはあえて返事をする。
「人は間違える生き物だ、だが間違いに気付くのはいつもすべて終わった後だったりする。」
ザダンはハクのこの言葉を聞いてうつむいてしまう。
ハクはまた話を続ける。
「問題はそのあとに何をするかだと俺は思っているがな。」
ザダンはただ仲間の亡骸を見つめている。
「何を・・・するか・・・。」
ハクが周囲を観察していると、今度はトレットが口を開いた。
「おい、ハク、この人間・・・魔人だぞ、匂いでわかる。」
ハクはすぐに魔人の亡骸に近づく。
魔人を観察すると、死因が切り傷であることがわかる、さらに言えばハクはこの切り傷から使い手がかなりの使い手だと判断した。
「ザダン、お前の仲間に刃物を扱うのが上手いやつはいるか?」
いつの間にかザダンは泣くのをやめていた。
「いる、俺たちの中で一番の使い手がそうだ。」
「なるほど、今俺の前にあるのはお前の仲間ではなく、魔人の死体だ。背中には切り傷、あとはわかるな?」
「あぁ・・・わかるよ、生き残りがいるってことだな。」
「こいつを倒したお前の仲間から話を聞きたい、彼らが移動するとしたらどこだ?おそらく魔人に追われて身を隠しているはずだ。」
「身を隠すような場所ってことか、わかるよ。すぐに案内するからついてきてくれ。」
ザダンは仲間たちの亡骸に背を向け、扉を開けた。
「あとで必ずお墓を作りに来るよ。」
ハクもザダンの後に続き、レジスタンスのアジトを出た。
「ハクさん、俺決めたよ。必ず仲間の敵をとる。そして、この国を変える。それが俺がなすべきことだ、仲間の思いを最後まで遂げてみせる。」
ハクはザダンの後を追いながら、口を開いた。
「あとで仲間の埋葬、手伝うよ。」
ハクが言ったのはたったそれだけだった、だがザダンはまた少しだけ泣きそうになった。
ザダンの案内に従って、道を走っているとノイルがハクに問いかける。
「気づいているか?」
「気づいてる、後を付けられてるな。ザダン、なるべく自然に路地裏の広間に進路を変更してくれ。」
「了解。」
ザダンは小さな声で返事をすると、ハクも感心する程度にうまく路地裏まで進路を変更してくれた。
「【ディオス・ヴァキオ】」
ハクはトレットを装備して姿を消し、路地裏にザダンだけ残した。
先ほどハクたちの後を追っていたものは現れない。
「見つけたぞ。」
ハクはノイルの声に反応して、指示された方向を見る。
「なるほど、向こうも姿を消せるわけか、若干魔力の残りを感じる。」
ハクはトレットの瞬間移動で先ほどの男の後ろへと接近、その後おそらくは魔人と思われる男をつかもうとする。
「ほぅ、真属性魔法か、相手が使っているとここまで厄介だとはな。」
敵は真属性魔法で気配のみをその場所にずらしていたらしい、おかげでハクが手を伸ばした箇所にはだれもいなかった。
「だが真属性魔法なら俺もある程度コツはわかる。」
ハクはずらされた空間に残る魔力を探った。
「お前、それ以上無駄な抵抗はやめたほうがいい。この男は人質だ。」
いつの間にかザダンの後ろに魔人が立っている。
黒い短髪に黒い瞳、個性のない顔立ちに個性のない服装、間違いなく人間に擬態し、本来の姿を隠している。
ハクは横の空間を瞬時に殴りつけた。
その瞬間その方向へと魔人は体をよろめかせる、どうも自分は安全だと思っていたらしく不意打ちが成功したようだ。
ザダンが敵のそばから脱出し、ハクの方へと駆け寄る。
だがそれよりも早くはハクは瞬間移動で敵の方へ接近し、また腹の同じところを殴る。
魔人の体は完全にくの字に曲がった。
最後に顎に裏拳をたたき込み、まるで何かの作業のように魔人を無力化してしまう。
「こいつはどうも、そこまで強くはないようだな。真属性魔法には面食らったがそれだけだ。」
「ハクさんを襲った時も思ったけど、尋常じゃない強さだ。」
ザダンはハクの作業のような戦闘風景を見て戦慄しているようだ。
そうこうしているうちに気を失っている魔人に腹パンをしてハクはすぐに意識をはっきりさせる。
「グハッ!?はぁっ、はぁっ、俺を殺さなかったことを後悔するぞ?」
なかなかに度胸のある魔人だったようで、この期に及んで挑発してくる。
「お前たちの計画を教えろ、そうすれば助けてやる。」
「おいおい、お前馬鹿なのか?言うわけないだろう?」
魔人はとても醜い顔でハクを挑発してくる。
「もう一度だけ聞く、計画を教えろ。」
ハクは無感情に魔人を見る。
「死ね、人間。」
それが魔人の最後の言葉だった。
ハクは容赦なく魔人の命を奪った。
先ほどまでハクのことを優しい人物だと持っていたザダンは、あまりのハクの容赦のなさに驚愕した。
「そこまで・・・する必要が?」
「こいつらは俺の仲間を罠にはめ、人間を虐殺している。俺は聖人じゃない、なるべく人は殺したくないがそれでも危険だと判断すれば一瞬も容赦しない。」
魔人の死体に【ディオス・ヴァキオ】をかけて透過し、地面に埋めてしまった。
「最後に情けをかけるために質問したが、差し伸べた手を拒絶したのはこいつだ。本来であれば魔人たちがゾーイたちの秘密に気付いているか確認したかったが今となっては仕方ない。」
トレットが犬状態に戻ると、ハクは両手をぱんぱんと払った。
「ザダン、なるべく早く案内してくれ、おそらくレジスタンスを追っているのはこいつだけじゃないはずだ。」
ハクとザダンは路地裏から出てまた走り出した。
「あそこは言わば俺らの一番大きなアジトだった、あそこを潰されていたとすればほかのアジトも危険だと考えるのが無難だから、だから俺たちの始まりの場所にいるはずだ。あの場所を知っているのは全部で10人もいない。」
ザダンはただの使いっ走りではなかったのか、話を聞くに創設メンバーの一人じゃないか。
ハクは少しザダンを見直した。
「もうすぐ着くから、準備しといてくれ。」
正直ハクの頭を持ってしてもかなり複雑な道順で、急にザダンが立ち止まった。
畳一畳ほどのスペースすらないような狭い行き止まりにたどり着いた。
地面には草がところどころ生えていて不思議なところはない。
ザダンが地面に近づいて、草をの束を引っ張ると地下に空間があり梯子がのぞいた。
「どこに監視の目があるかわからない、すぐに降りてくれ。」
ハクはザダンの後を追って地下に降りて行った。
正直言ってそこは清潔ではない、ただの穴倉に梯子がかけてあるだけだ。
ただかすかに血の匂いがある。
ザダンが進んでいった先で立ち止まる。
中は薄暗くてよく見えない。
「そんな・・・嘘だろ・・・。」
どうやら男が一人だけ中で倒れているようだ。
「普通のやつが魔人と戦ったんだ、勝っただけでもお前の友達はすごいよ。」
ハクがそう告げると、ザダンはその場で膝をつく。
それと同時にハクの手にトレットが装備される。
「トレット・・・どうしたんだ?いやそういうことか。」
ハクは左手を男に向けた。
ハクの手から光が放射されたかと思うと、倒れている男がゆっくりと目を開く。
「・・・ザダン?無事・・・だったのか?」
ザダンの表情が喜びへと変わっていく。
「こっちのセリフだよ、馬鹿。」
どうもこの男は助けられた用だ。




