罠だよねー
ここは・・・どこなの?
エルミラは周囲を静かに観察している。
あの時一瞬だけエルミラが知覚するよりも早く、体に触れられてしまったので非常に悔しい思いをした。
一回目に触れられた時一瞬で魔法陣の上に連れていかれ、次の瞬間さらに遠くへと飛ばされた。
随分周到な作戦だったようだ。いとも簡単にはめられてしまったようだ。
エルミラは拳を握りしめ悔しそうにしている。何よりも手元にライメイがない。
かなり戦力の低下を意味している。
現在エルミラは謎の無重力空間に飛ばされてしまったようだ。地面に足がつくということがない。
正直魔導書も何も検討がつかない状況でこんなことになるとは想定していなかった。
到達に暗闇の中から声が聞こえる。
「お前はこの後俺の手によって殺されることになるが最後に言い残すことはあるか?」
エルミラは姿の見えない虚空をじっと見つめる。
「言い残すこと・・・は特にないよ。でも言っておくことはある。私は勇者、あなたを打ち滅ぼす。」
エルミラの瞳の色が黄金色に変わる。
「【エルダーズマジック・ライトニング・カムイ】」
エルミラが黄金色に光り輝き周囲を照らす。
だがどうもこの暗闇は光がないから生じているものではないらしく、敵の能力から生じている者なのかもしれない。
光はエルミラの周囲をほんの少しだけ照らしているが、敵の姿はいまだに見えない。
気配すらたどることができない・・・このままじゃ常に不意打ちされているのと一緒だ。
エルミラは必死に考えを巡らせるが、明暗を思いつくことはない。
「【エルダーズマジック・ライトニング・フルバースト】」
エルミラの全身から、周囲へと雷の大本流がはじける。
敵を認識することができないのであれば、範囲攻撃で敵に充てるしかないとエルミラは考えていた。
「それはあまり意味のない手だ。俺はお前のそばにいるようでいない。そこにあってそこにないんだ。お前はただ俺になぶられることしかできない。【ファイア・ボール】」
丁度エルミラの背後からファイア・ボールが飛んでくる。
だがエルミラもさすがの超反応でそれに対応して見せる。
背後へと振り向きつつ手に生じさせた雷で魔法をはたき落とした。
「ほう・・。動きづらいこの空間で攻撃に反応しただけではなく、はたき落として見せるとはな。素晴らしい反応速度だ。」
「これはあなたの能力ですか?」
「その通りだ。今更隠しても無駄だから教えてやるが、俺の能力は【ガラクシア】。暗黒空間を再現することが可能で、使用されたものは逃れることはできない。どうも半端に俺たちの知識があるようだから教えておくが、俺達の能力は総じてデーモンスキルという。死ぬお前に伝えても意味はないが。」
「・・・デーモンスキル。」
以前ハクがイズラに行ったときに出会った魔人も瞬間移動のデーモンスキルを使用していたといっていた。つまり命の書を使用した魔人の強化個体ってことね。
「さて、反応速度の素晴らしいお前がどこまで反応できるのか実験していくとしようか。」
周囲からうっすらと魔力が感じられる。これが一か所なら敵の居場所がわかるのだが、残念ながら周囲全体から魔力を感じる。
敵の生命エネルギーも観ることができない。
「【フレイム・インフィナイツ・ランス】」
全方位から一斉に炎の強力な槍が飛んでくる。
無重力空間で動きずらいのにも関わらず、エルミラはそれらすべてに何とか反応して見せる。
時にかわし、時にそらし、特に撃ち落とす。
だが見切りは完璧とはいかず、体にわずかだが傷が増えていく。
「どうした?防ぎきれていないようだが。」
炎の槍がとめどなくエルミラの方へと向かってくる。
エルミラの体に徐々に傷が増えていく。
だがエルミラの瞳に諦めは一瞬たりとも見えない。
エルミラは一度防御を半分ほど捨て、右手を前に出した。
それでも炎の槍がエルミラの体を貫くことはない。
一瞬の油断もなく、ぎりぎりで攻撃をそらし続けている。だが体に残る傷は先ほどまでより少しだけ深い。
「【エルダーズマジック・ライトニング・レイ】」
エルミラの右手から非常に細い雷が放たれる、それはとまることなくどこまでもまっすぐに飛んで行った。
エルミラは一瞬で頭を伏せた。
先ほど自分が放った魔法が自分の背後からまた飛んできたのだ。
エルミラの頭上すれすれを雷魔法が通過していく。
「無駄だ。この空間がどこかで完結していると考えたのかもしれないが、それはない。複雑に次元を絡めてあるのでな。お前の魔法はお前へと帰る。」
エルミラはにっこりと笑った。
「ならあなたはこの中にいるみたいね。」
炎の槍が止まりエルミラの暗闇から語り掛ける。
「なぜそう思う?」
「次元が複雑に絡んでいるのに空間の外からコントロールすることは不可能だと思うから。」
エルミラがまた右手を前に出した。
「お前の常識で語るな。俺からすればそれもたやすい。」
「なら魔法を止めるべきじゃなかった。余裕がなくなっているのが見え見え。」
「黙れ。【フレイム・ウェーブ】」
炎の波がエルミラに迫る。
「【エルダーズマジック・ライトニング・シールド】」
エルミラを雷が包む、炎の波はエルミラの雷を貫通することができずにエルミラを避けるように進み続けている。
「あとはあなたがどこにいるか調べるだけ。【エルダーズマジック・ライトニング・マグネティコ】」
エルミラの周囲に目に見えない静電気のようなものが広がる。
「おそらくそれは感知魔法なのだろうが、それは意味もない。」
「意味がないかは、私が決める。というかもう見つけた。」
エルミラは人差し指である方向を指さす。
「【エルダーズマジック・ライトニング・レイ】」
そして一瞬の猶予も与えず光速の攻撃を敵に放つ。
「ぐぅっ!?」
攻撃は直撃したようだ。
先ほどエルミラが放った魔法【エルダーズマジック・ライトニング・マグネティコ】は電磁場を広範囲に広げる魔法だった。
「【エルダーズマジック・ライトニング・エレクトロマグティカ】」
これは今までエルミラがほとんど使って来なかった魔法だが、これはエルミラがマグネティコを使用している時のみ使用することができる魔法。
マグネティコで広げた電磁場の範囲であれば任意の場所まで光速移動できる魔法だ。
ちなみにオスカー様様だ。
エルミラは雷をまとわせた手を虚空に突き出す。
「グハッ!?」
「あなた自身が光速移動できるわけではなかったみたいね。簡単に捕らえられた。」
暗黒が晴れていき、エルミラは自分がよくわからない、鉄製の地下室のような場所にいたことを知る。
足元には魔法陣があり、これで自分が転移させられたことを知る。
「ここは・・・どこ?」
エルミラは手に突き刺さっていた魔人を振り払う。
「そういえば私はあなたの名前も知らなかった。あなたのおかげでまた一つ強くなれたと思う、ありがとう。【エルダーズマジック・ライトニング・バースト】」
そういうとエルミラは名も知らない魔人を雷の大本流で火葬した。
魔人は跡形も残さず虚空に消えていった。




