最悪の事態だよねー
ハクはレジスタンスの一人に歩み寄った。
レジスタンスは大体30人ほどいた、ハクは正面のレジスタンスを突き飛ばすと、そのままレジスタンスは他を巻き込み吹き飛んでいく。それだけで10人が減ってしまった。
残ったレジスタンスはうろたえ始める。
「ゾーイ、お前は弱いのか?この程度の刺客しか出してもらえないなんて。」
「あたいは別に弱くない、こいつらがこの程度で国を落とせると思っているだけだ。」
ハクはゾーイの方へと振り向いた。
「なるほどね。」
誰がどう見てもハクはゾーイを煽っていた。
ハクがよそ見をした一瞬の隙に別のレジスタンスがハクのもとへと接近、ほかの者はいっせいに遠距離攻撃してきた。
ハクは右手を正面にだし【鉄壁】を発動した。
走って接近したものは鉄壁にぶつかり、気を失った。遠距離攻撃は意味をなさずに地面に落ちた。
「それにしても弱いな、お前ら。何かを変えるためには相応の力が必要なんだと思うがな。」
ハクは倒れている者を冷たい目で見降ろした。
それが決め手になったのかレジスタンスは塵尻になって逃げていった。
だがハクは何もない空間を掴んだ。するとレジスタンスの一人が急に何かにつかまれたように足を止めた。
「グアっ!?なっ、なんだ!?」
他のレジスタンスはそれに気づかずに逃走してしまった。
ハクは一人逃げ遅れた零士スタンスを後ろからつまみ上げた。
「お前が今来た集団ではトップなんだろう?動きを見ればわかる。お前からも、ゾーイからもいろいろ聞きたいと思っていたんだ。」
ハクはさっさと倒れている奴らも含めてこの空き地から追い出すと、レジスタンスのトップとゾーイがその場に残った。
「さて、詳しい事情を聞かせてくれるな?まずはゾーイから頼みたいところだ。」
ゾーイは首を縦に振った。
「まぁ値の話もそいつらと大差ないね。この国は腐っている、だから滅ぼすべきなんだ。世界協定の無視、そして奴隷制度をそのまま続けている。あたいの友達の中にも身内を奴隷に落とされたものは数多くいる。ブラックマーケットで一度売られちまったら、どこかの金持ちに一生奴隷にされて、死ぬまでこき使われる。その繰り返しさ。王が気に入った娘の家はわけのわからない罪で有罪になり、いつの間にかブラックマーケットに送られている。さらにこの国には住民を外国に逃がさない仕組みが出来上がっていて、ほかの国に移住することは不可能。住民たちは毎日怯えて暮らしているのさ。この国は・・・こんな国はあっちゃいけないんだ。」
ゾーイが自分の拳を強く握りしめた。その握りこぶしに込められた力は尋常ではないらしく、出血し、血が滴っていた。
今のはまるでゾーイの体験談のようだった。
「・・・なるほど、見ただけじゃ気が付かなかったな。まぁブラックマーケットを運営する国がまともとも思っていなかったがな。」
ハクはゾーイの方に歩いていき、その手を取った。
ガントレット状態のトレットが光ると、いつの間にかゾーイの手の傷は治っていた。
「・・・ありがとう。」
ゾーイは半ば強引にハクから手を引き戻した。
ゾーイの手首には確かに、刺青があった。丸の中に、丸が沢山描かれたような模様で、ゾーイはそれを隠したがっているように見える。
「あ、あんたにも奴隷紋が!?」
一人残していたレジスタンスがそれに反応した。
一瞬だが、レジスタンスはそれを見てしまった。
「だとしたら俺たちはなんて不毛なことをしていたんだ。」
レジスタンスの男は唇を噛みしめて後悔していた。
「お前たちは奴隷の集団なのか?」
「厳密にはそうではない、男の奴隷は労働力としていろいろなところで使用されるが、用が済めば捨てられる。少なくとも俺は捨てられた奴隷だ。俺以外のレジスタンスは捨てられているか、逃亡したものがほとんどだ。」
「なるほどな、でもなんでゾーイを狙ったことが不毛だったんだ?」
ゾーイが口を開いた。
「そいつらの狙いはおそらくあたいと一緒さ。奴隷たちは体に刻まれた奴隷紋のせいで、所有者に逆らおうとすると、燃えるような痛みを生じる。つまり奴隷紋が機能している限りは、逆らうことはできない。」
ハクはゾーイの方を見た。
「つまりそれを止める何かがあるんだな?」
「そういうこと。」
「だから協力者が必要で俺達に目を付けたのか?」
「あんたがこの国に何をしに来たかはわからないけど、少なくとも強者で悪人じゃないと思った。転移陣の近くにあんたが初めて来たとき誰も殺さなかったしね。」
「それだけで判断するのは危険だと思うけどな。」
ハクは一瞬だけ携帯を確認した。
「十分さ。それぐらいあたい達は切羽詰まっている。」
ゾーイに視線を戻した。
「切羽詰まっているとは?」
「そこの馬鹿どもが知っているんじゃないのか?」
ゾーイはレジスタンスの一人を睨みつけた。
「あぁ待てよ、なるほど、理解できた。」
ハクはまた頭を抱えた。というかそうでもしないとこの面倒ごとを受け止めることができない。
「ゾーイは俺に協力を求めた。じゃぁレジスタンスは誰に協力を求めたのか・・・ってことか。」
ハクはその場にかがんで地面を見つめている。
そしてそのまま視線をレジスタンスに合わせた。
「お前ら魔人に協力を求めたのか?」
レジスタンスの男はハクの視線から逃げるように、別にの方向を見つめた。
ハクはその場にあおむけに倒れた。
「なるほど、大体事態は把握できたよ。最悪だ、ありえないくらい面倒なことになってきているってことがな。俺はこれでもやることがあるからこの国に来たんだが、うんざりだよ。」
今日何度目かのため息を天に吐いた。




