魔人調査だよねー
ハクがこの国のレジスタンスに絡まれているころ、エルミラはノイルと一緒にアジトをでて、魔人たちから情報を集めようとしていた。
ノイルはわずかな魔力の差で、彼らと人間を見分けることができるらしく、今日は頼りっきりになることだろう。
アジトを出てブラックマーケットを歩き回っている状況だ。狙い目の魔人としては、魔物の延長上のような弱い魔人を狙っている。
ちなみに先ほどからそういった魔人はちらほら見つかっている。だが彼らをとらえることはしない。その理由としては彼らは下級魔人は複数で行動していて、一人を捕まえると他を逃がす恐れがある。そうなった場合は、彼らがほかの魔人に状況を伝え、もっと厄介な状況を引き起こすのかもしれない。
「単独行動をしている魔人は全然いないね。」
「そのようだね。」
エルミラとノイルは周囲を観察している、実はエルミラも魔人かどうかを見抜くことができるようになっていた。あの魔法を使用して以来、勇者としての感覚が以前よりも敏感になり、人間だけでなく、それ以外も生命エネルギーを感じ取れるようになっていた。
人間と魔人ではエルミラの目に見える生命エネルギーの色が異なっているので、人間以外を見抜くことができるのだ。だが、人間だけでも亜人と完全な人間種では、色が異なる。つまりその種族が何なのか理解していないとこの方法は使うことができない。
先ほどノイルにどれが魔人か聞くことによって、色を照らし合わせることができた。一応ノイルに聞きながら照らし合わせることによって、今日中に色と種族を照らし合わせることが可能だろう。幸いこの国のブラックマーケットにはいろいろな種族が数多くいる。
「でも魔人たちはなんで今このブラックマーケットにいると思う?」
「それは僕にもわからないよ。でもこんなにも数多くの魔人が集団行動をしているのは珍しい。おそらくは魔王が絡んでいるだろうね。そうなってくると、おそらくは魔導書が狙いになるとは思う。」
ノイルは腕を組んで話を続ける。
「でも数人かなりの力を持った上位魔人がいるのに、下級魔人がこんな量必要なわけがわからない。この国ならもう上位魔人だけで落とせるような気がするんだ。」
ノイルは自分の考えを整理しながら、エルミラに教えてくれる。
いつの間にか組まれていた腕は片腕だけになり、顎に移動していた。
「だからこんなに魔人がいるわけがわからないんだ。」
「確かに、魔王は関わってそうだね。う~ん例えばこの国の戦力が魔人たちでも手こずるくらいあったとしたらどう?」
「う~ん、それもあるかもしれないけど、少なくとも今のとこ魔人たちよりも強い魔力はこの国からは感じないね。エルミラの目にはどう映っている?」
「生命エネルギーの方もノイルの出した結論とおんなじ感じよ。そんな強い人がいるとは思えない。」
ノイルは考えを整理しようとしているのか、顎に手を当てたまま天を見上げた。そして空に向かってため息を吐き出した。
「だめだ、さっぱりわからない。圧倒的に何かの情報が足りてないんだ。それさえわかれば簡単にわかりそうなものだけど・・・。」
「ノイルもハクと同じくらい利口だと思ってるけど、それでもわからないなんて。」
エルミラはノイルの方を見て、なんとなく口角を上げているように見える。気にすることはないと慰めているようだ。
「まぁそれは仕方ないよ、僕よりもハクの方が遥かに頭がいいのは確かだから。きっと彼ならもうすぐこの事態の全貌を把握できるだろうね。」
ノイルはエルミラに笑い返した。
「いくら何でもハクを買いかぶりすぎじゃない?」
くすくすとエルミラは笑っている。
「そうかな?でも最近は彼の底知れない実力に知性と強さが、少しずつ僕の興味をくすぐっているよ。」
ノイルは今度は正面を見て笑っていたが、それはどこか極上の食べ物を目の前に出された、まさしく獅子のようだった。
「あんまり身内では戦わないほうがいいんじゃない?」
「今はそうだろうね・・・でもいずれは、一度だけでいいんだ。」
長年何かを探していて、ようやく見つけたような、そんなつぶやきだった。




