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3日間だけの婚約者  作者: このはなさくや
本編

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7/16

幕間

 会場に入りゲストへの挨拶も一段落したところで、アルベルト様はしばらく場を離れる非礼を詫び、私から離れて行った。後姿を追うと会場の入り口付近に同じ黒の軍服姿のかたまりが見える。何か打ち合わせすることがあるのだろう。宰相様は忙しそうだ。



「久しぶりだな、桜」

「It's been a very very long time,Saku! I missed you sooo much!」

「翔太!エリックも!」



 その時見計らったように懐かしい声がした。振り向くと赤毛の美女を伴った、見事な体躯の青年となった翔太と、金髪碧眼で長身の美男子エリックが立っていた。再会の嬉しさに思わず笑みがこぼれる。



「翔太、久しぶり!随分身長が伸びたんじゃない?エリックも今日はまさに本物の王子様ね、とっても素敵よ!」

「おう、俺はいつでもバリバリ成長期だからな!それより彼女を紹介させてくれよ。サリーナだ。」

「お会いできるのを楽しみにしていました、サクラ様。サハル王国のサリーナと申します。どうぞよろしくお願いいたします。」



 そう言ってその美女は少しはにかんだ様に挨拶した。サハルのサリーナ王女といえばその美貌で知らぬ人のいない有名なお姫様だ。見事な赤毛を巻きアップにしたカリーナ姫は少し釣り目がちの華やかな顔立と見事なプロポーションをしている。・・・ここまで体型が違うと逆にコンプレックスが刺激されないものなのね。



「まあ、サリーナ殿下、なんて恐れ多い。私のことはどうぞサクラとお呼びください。翔太、ずいぶん綺麗な方を捕まえたわね、美女と野獣じゃない?」

「いやあまあね、へへ、口説きに口説いてようやく捕まえたって感じだよ。きっかけをくれた桜に感謝しないとだな」

「まったくショータにはもったいない。サハルの華と呼び名の高いサリーナ殿下がこんなにお美しい方だとは知りませんでした。私はエリック・バーゼルと申します。ショータとサクラとは古い知り合いです。」

「まあ、エリック殿下、どうぞサリーナとお呼びください。ショータから話は伺っています。機会があれば是非冒険のお話しなど聞かせていただきたいですわ」



 エリックはサリーナ王女の手を取ると優雅に挨拶をした。そして今度は私の方を向いて打って変ったような様子でハグをしてきた。



「サク、会いたかったよ。いつになったら僕の国に来てくれるの?早くしないと待ちくたびれておじいちゃんになちゃうよ。せっかく会えたんだから、今日こそバーゼルに連れて帰るからね!いいね!?」

「エリック、貴方本当に変わらないわね、黙っていれば正真正銘本物の王子様なのに」

「まったくお前のそのノリはいつになっても変わんねーな」



 私と翔太がそう言って笑うと、エリックも破顔し、大きな声で笑った。しばらく懐かしい話で盛り上がった後、エリックが私の指輪に気が付いて質問してきた。



「ところでサク、指輪なんて珍しいね。仕事の時は邪魔だって言ってなかったっけ」

「ああ、これね、これ・・・」

「まあ、素敵!これが噂のヴァンダイク家のハートですのね!」



突然身を乗り出してきたサリーナ姫が私の左手をばっと取ると、ハートのダイヤの指輪をうっとりと見つめた。あまりの勢いに翔太もエリックも呆気にとられた顔で彼女を見ている。



「えっ、なにそれ?」

「ご存じなくって?ヴァンダイク家に伝わるハートのダイヤはとても有名ですわ。代々の公爵がプロポーズする時に渡すんですって。もう何百年も受け継がれている指輪なんですのよ。本当に素敵・・・」

「えっ、サクどういうこと?今回の件ってお仕事じゃなかったの?」

「エリックあのね・・・」

「その通りです。この指輪はとても大切な指輪なんですよ、サク」



 突然ぽんと後ろから肩に手を置かれるのがわかった。会話に夢中になっていた私がびっくりして振り向くと、いつの間に戻ったのかアルベルト様が立っている。アルベルト様はエリックの方を向くとなんだか凄みのある微笑を浮かべて慇懃に挨拶した。



「神聖ネール帝国の宰相を務めておりますアルベルト・フォン・ヴァンダイクです。私の婚約者のサクがお世話になったようで」

「これはこれは、エリック・バーゼルと申します。アルベルト殿のお噂はかねがね聞いております。大変優秀な方だそうですね」

「バーゼルの第2王子のエリックの殿下でしたか。確かバーゼルの騎士団長を務めておられるとか。お会いできて大変光栄です」



 なんだか二人の間で火花が散っているように見えるのは私の気のせいだろうか。翔太は二人を見てにやにや笑ってる。アルベルト様は今度は私の方を向くと優しい笑顔を向けた。



「それでサク、こちらの方も私に紹介していただけますか」

「もちろんですわ、アルベルト様。こちら私の古くからの友人のショータ・ナカムラと彼の婚約者であるサハル国の第2王女、サリーナ殿下です」

「ショータ・ナカムラだ」

「サハルのサリーナです。サクラ様の婚約者でいらっしゃるとか、どうぞよろしくお願いいたします」



 私が翔太とサリーナ姫を紹介すると、アルベルト様は王女の手を取り挨拶を返した。



「お会いできて大変光栄です、ショータ様、サリーナ殿下。神聖ネール帝国の宰相を務めておりますアルベルト・フォン・ヴァンダイクと申します。この度はご婚約大変おめでとうございます。今日は是非ごゆっくりお楽しみください。・・・それから大変申し訳ないのですが、少しサクに用事があるので失礼いたします」

「えっ?」



 アルベルト様は優雅にお辞儀をすると、私の手を取って会場を後にした。私が慌てて後ろを振り向くとびっくりした顔をしたエリックと、にこにこ笑う翔太とサリーナ様の顔が見えた。



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