初めての対面 サクside
「おはようございます、アルベルト・フォン・ヴァンダイク閣下、サク・ラーと申します。どうぞサクとお呼びください」
朝一でお屋敷に着いた私は執事のフーリッツさんが用意した部屋に案内してもらい、いつもの魔女っ娘ローブからドレスに着替えた。
今日は明日のドレスの支度でこの屋敷に呼ばれた。お金持ちの高官の婚約者ともなるとドレスの色や形の指定が色々あるらしい。
今回私に用意してくれたのはアルベルト様の瞳の色パープルを基調としたドレス達。3日間の契約なのに何故このドレスの量と思うけど、私の心の平穏のためあまり深く考えないようにしておこう。
今日はこれから初顔合わせなのでそのうちの1着を早速着せてもらった。薄い紫に花柄のオーガンジーのレースを重ねたドレス。生地と仕立ての良さが上品なデザインを引き立てている。髪はハーフアップにしてもらい、ドレスと同じオーガンジーのレースを結んでもらう。メイクはあくまでも控えめに。頰にほんのりチークをのせる。なんたって婚約者(仮)との初ご対面ですから、ここはあくまで上品で可憐なご令嬢のフリをしてみましょう。
着替えが終わってフーリッツさんに案内されて玄関へ行くと、ちょうどアルベルト様が出勤するところだった。180cmは超える長身のいわゆる細マッチョ、黒髪にアメジストの瞳に鼻筋の通った顔、33歳の男盛りは噂の通り嫌味なほどのイケメンです。
「・・・あなたが私の婚約者か。私のことはアルベルトと。」
「アルベルト・・・様?」
いやいや仮にもこの国の宰相である依頼人様を敬称なしでは呼べないですよ?と私は曖昧な笑みを浮かべる。というかうっすら冷酷な笑みを浮かべたそのご尊顔にすでに私のHPが削れらております。
「婚約者なのだから人前ではアルベルトと呼ぶように。ところでフーリッツから今後の予定を聞いてるか」
「はい、今日はドレスの打ち合わせでこちらに参りました。私も明日の支度があるので夕方にはお暇するつもりです。明日はお城の執務室まで私が参ります。明後日は念のための予備日と伺っております」
「そうか。・・・私も今日はなるべく早く仕事を終わらせて帰るつもりだ。もし時間が合うようなら食事をご一緒していただけないだろうか。明日の打ち合わせをしたい」
「承りました。本日からの契約なので問題はありません。私の方で何か用意しておくことはございますか?」
仕事が終わったら食事をご一緒にってデートのお誘い?うわーこれ一体何のフラグですか!?動揺に思わず顔が崩れてしまいそうになるけど、ここはぐっと我慢しよう。出でよ鍛られし面の皮!今こそ役立つ時だ!
「特にはないが・・・ふむ・・・何か好きな花はあるか?」
「お花?そうですね・・・芍薬、いえ、ピオニーが好きです」
「ピオニーだな、わかった。それと左手を」
そう言ってアルベルト様が右手を出したので、私は仕方なく自分の左手を彼の掌に乗せる。と、彼はまじまじと私の手を見つめ、大きな手で私の左手を触る。優しく私の指や甲を触るこの感覚はーーーまるで愛撫されてるみたい。思わず変なことを想像してしまって私は自分の顔が一気に熱くなるがわかる。
「あ、あの・・・」
「指輪のサイズを確認しているだけだ。手を触っただけで赤くなるようなご令嬢に私の婚約者のふりが勤まるのか」
背筋がぞくりするような低音ボイスに私を真っ直ぐ見据える甘い視線。自分の意思に反して身体が反応しそうで怖い。
「・・・色々初めてのことが多いので・・・アルベルト様が教えてくださいませ」
私がかろうじてそう返すとアルベルト様は私の手にキスを落とし、そのまま馬車に乗って去って行った。
・・・朝から私のことこんなにどきどきさせてどうするんだ。心臓止める気か。私は彼の馬車が見えなくなるまでその場に立っていた。




