Episode:5 ウワサの源泉
「さて、勝ったからにはちゃんと答えてほしいッス! 例の殺人鬼の噂——誰が流してるのかを!」
「あー、そうだったそうだった。——ほら実月、教えてやんなよ」
「うん、わかった。私のとこに入ってきたのは二週間前だったんだけど、元を辿れば一ヶ月以上前から動きはあったみたいです。情報の流れは西から東へ……もちろんインターネットとかで多少ズレてるとこはあるかもしれないけど、言伝の流れはそんな感じかな」
「じゃあ西の方に向かえば噂の大元に辿りつけるってことッスね?」
「うん、もっと言えば南西の港があるところかな。あそこ、結構学生と関わる怪しい大人がいるみたいだから。そのうちの一人が元凶かもしれないね。正確に誰かまではわかんないや、ごめんね」
「いやいや、場所が洗い出せただけでチョー助かったッスよ! じゃ、あっしはそっちへ行くんで、またねッス!」
大通りへ出て、私は駅へ向かった。外はまだ日が出て残暑が厳しかった。
電車を使えば二十分とかからない道のり、座席に着くと疲れがいきなり押し寄せて眠たくなってしまう。
下車し、ここからは徒歩で向かう。海の近くということもあってか、生暖かい風は吹いていた。
ポケットから振動があった。探知機の針であった。
工業地域、広い一本道の車道が水平線まで続く江峰市の南側。
咄嗟に、振り向いた——。
「まったく——一人で探しに行くなと言ったじゃろう」
「でも——勝手にどっか行っちゃう方も悪いんじゃないッスか? 律姫さん」
肩をがっしり掴んでじっとこちらを見つめたのは律姫であった。
「それは仕方のないことだったのじゃ! あの時いきなり連絡が入っての、その救難要請に応えるべく早急に向かっていったのじゃ」
「それなら仕方ない——とはいかないッスよ? 後で連絡してくれればよかったじゃないッスか」
「そ、それは失念しておった……」
「一応こっちからも連絡してたんスけどね。——まあ、今までの話をすると、どうやらこのあたりに殺人鬼の噂を流した奴がいるみたいッス」
順序立てて、江峰東高校で荒谷末那とあったことから犬塚実月との戦いまでを伝えた。
「大体はわかったのじゃが……ちと引っ掛かるとこがある。部室におったのが八敷意ではなく、荒谷末那じゃと?」
律姫の顔に深い影が落ちた。荒谷末那は律姫たちの顧問である八敷意の姉だと聞いているが……?
「どうも辻褄が合わんのじゃ。意自身出張なんてことをこちらに伝えてはおらぬし、なんなら昨日彼女と会ったばかりなのじゃ」
——荒谷末那は私に嘘を吐いた……? しかしそれは何故?
文化研究部の部員たちには接触せず、部外者である私——そして外部顧問のシャルディーンの二人がその存在を認知している。
その目的は如何に。
「有り得ぬとは思うが……誘拐? 彼女はそんなに容易く落とされる奴ではないぞ」
身内という油断を誘ったか。今のまだ彼女の罠に嵌ったままだとしたら芳しくない状況であった。
「どうするッスかー? それが本当だとしたらとんでもないことになるッスよ!」
「ここは一度戻るべきか……しかし、こちらの調査も進めたい。かといってここでまた二手に分かれてしまっては……」
ぶつぶつと、独り言を呟きながら熟考し続ける律姫。その雑音を何者かが遮った。
「——その必要はないわよ。キミたちが求めているものは、既にここに居るんだから」




