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第九話 平和になりすぎた戦国時代と、武将たちの狂乱「趣味ブーム」

第一章:合戦の代わりに「趣味」でマウントを取り合う男たち

天正十一年(一五八三年)初夏。京都・坂本城。

「……なぁ、茂朝」

コタツを片付け、縁側でかき氷(氷室から運ばせた)を食べていた明智光秀は、遠い目で空を仰いだ。

「世の中というものは……平和になると、人間はこうも奇妙な方向へ暴走するものなのか?」

側近の溝尾茂朝が、困惑と苦笑の混ざった表情で頷いた。

「はは……。戦が起きなくなった結果、全国の大名方の『溢れ出る体力と財力』が、すべて違う方向へ噴出しているようでございます」


光秀が呆れるのも無理はなかった。

光秀が「戦うな、お歳暮を送れ、内政をしろ」とテキトーな裁定を下し続けた結果、日本から「合戦」という娯楽(兼仕事)が完全に消滅。

その結果、暇を持て余した戦国武将たちが、**「謎の趣味」で互いにマウントを取り合う地獄の平和時代**が到来していたのだ。


第二章:参議・秀吉の「激推しスイーツ」と、勝家の「筋肉健康法」


**【京都:参議・羽柴秀吉】**

「よし! 新作の『黄金かき氷・練乳あずき』を開発したぞーっ!」

秀吉は参議として朝廷権力をフル活用し、全国から甘味を集めて「スイーツ開発」に没頭。朝廷や大名たちを集めては「黄金の茶室」ならぬ「黄金の茶店」を開店し、連日甘味を振る舞っていた。

「合戦で血を流すより、砂糖を流し込んだ方が天下は納まる!」と豪語し、今や「天下のパティシエ」と化していた。


**【越前:柴田勝家】**

「ぬううううっ! 筋肉こそが天下の宝! 腹筋一千回!!」

参議となった秀吉に官位を越えられ、戦の機会も失った勝家は、溢れ出るストレスとエネルギーを「筋トレ」へと昇華させていた。

「秀吉の奴め、甘いものばかり食べてブクブク太りおって! わしは光秀殿に『この筋肉と衰えぬ力』を見せつけるのだ!」と、毎朝越前の城下町で丸太を担いでダッシュ。家臣たちにも筋トレを強制し、北陸に空前の「マッスルブーム」を巻き起こしていた。


**【三河:徳川家康】**

「フフフ……薬調合の時間を邪魔するでない……」

家康はもともと好きだった「薬作り」にドハマりし、駿河や三河の珍しい生薬を調合しては「特製・健康薬」を作成。

「光秀殿は頭痛持ちとお見受けした。この『徳川特製・頭痛丸』をお届けせねば……」と、怪しい丸薬を大量に坂本城へ送りつけていた。


光秀は運ばれてきた「黄金かき氷」「きな粉(プロテイン代わりに勝家が愛用)」「怪しい丸薬」の山を見つめ、頭をかかえた。

「どいつもこいつもバカか……! 戦をやめろと言ったが、全員タガが外れすぎているだろ!」


第三章:真田昌幸の「ボードゲーム無双」と、政宗の「バンド結成」

さらに被害は全国へ広がっていた。


**【信濃:真田昌幸】**

謀略の機会を奪われた真田昌幸は、その溢れる策略欲を「囲碁・将棋・双六(ボードゲーム)」に注入。

「合戦で裏切れないなら、盤上で裏切るまで!」と、近隣の大名たちを上田城に呼びつけてはボードゲームでボコボコに破り、精神的に追い詰めるという「盤上の悪魔」として恐れられていた。

「ふははは! 徳川殿、そこはわしの『挟み撃ちの罠』よ! 飛車はいただいた!」と、盤の上で生き生きと悪知恵を働かせていた。


**【奥州:伊達政宗】**

光秀に「痛い陣羽織をやめろ」と叱られた政宗は、その情熱を「音楽とパフォーマンス」へ転向。

「光秀殿! 奥州の太鼓と和楽器を組み合わせた『奥州歌謡』を完成させましたぞ!」と、ド派手な衣装で和太鼓を叩き狂う謎の劇団を結成。

「いつか坂本城の庭で『楽曲を披露する』のが自分(政宗)の夢にございます!」と、光秀への推し活を音楽で表現しようとしていた。


坂本城の廊下で、光秀は深く溜息をついた。

「……茂朝」

「は、ははっ」

「わしはな……織田家を過酷で冷酷な上様から解放したかっただけなんだ。なのに、なんで大名どもがこのようになっているんだ……?」

「殿の『死に損ない故の無欲』が、大名たちの攻撃性を別の何かに変換してしまったのでございます……」


第四章:光秀「隠居したい」vs 大名全集団「絶対に許さない」

六月。光秀はついに重大な決意を固めた。

「もう嫌だ。わしは隠居する」

坂本城の広間に、秀吉、家康、勝家の3人を呼び出した光秀は、一枚の書状をドカンと叩きつけた。

「これは『隠居届』だ。わしは天下の相談役を辞める。坂本城も秀吉に返す。明日からは煕子とふたりで、山奥でひっそりと豆腐でも作って暮らす。お前たちも金輪際、わしのところにお歳暮や怪しい丸薬を送ってくるな!」


「「「な、なんだってーーーーーっ!???」」」」

三人の大名が同時に金切り声を上げた。

秀吉が涙目で光秀の袴にしがみつく。

「待て!光秀殿! 貴殿が隠居したら、わしと勝家殿がまた揉めて戦になるじゃろうが!」

「知るか!思い切り戦を楽しめ!」


勝家も巨体を震わせて叫んだ。

「光秀殿! 貴殿という『死に損ないの無欲』がいるからこそ、皆の欲得が押さえられておるのだ! 貴殿が隠居したら、また元の争い時代の再来だぞ!」

「知るか! 互いに滅びるまで争え!」


家康が真顔で光秀の手を握りしめた。

「光秀殿……隠居などなさったら、私の『徳川特製・健康薬』を誰が毒味……いや、ご賞味くださるのですか! あなた様が健やかでいてくださらねば、私は夜も眠れません!」

「やっぱり毒が入っていたのか!この狸!!」


光秀は3人を蹴散らし、怒り狂った。

「わしは『死に損ない』だと言っているだろ! なぜワシがお前たちのくだらない争いの相談役を続けなきゃならんのだ! 隠居させろ!」

「嫌だ! 隠居反対! 隠居反対!」

秀吉、家康、勝家が、光秀の目の前に寝そべり、「隠居反対ストライキ」を開始した。


歴史上、これほどまでに「辞めたがっている相談役」を「辞めさせまいと縋り付く部下(?)たち」の泥沼劇が存在しただろうか。


第五章:引き止め工作と、最終決戦の予感(※平和な意味で)

「……ハァ、ハァ……」

結局、3人の必死すぎる抵抗と「隠居したら坂本城の周りで連日奥州歌謡を大音量でやる続ける」という伊達政宗の脅迫により、光秀の隠居計画はあっけなく失敗に終わった。


夜。坂本城の庭で、冷えた月見酒を飲む光秀。

隣で煕子が、楽しそうにお酒を注いでくれる。

「殿。大名のみな様、本当に殿が大好きでいらっしゃるのですね」

「……大好きなのではない。あいつらはな、わしという『死に損ない』がいなければ、勢力の均衡が維持出来ないと思い込んでいるだけだ」


光秀は苦い酒をあおった。

(上様を討てば、わしの人生は終わるはずだった……)

(本能寺で腹を切り、歴史の陰に消えるはずだった……)

(なのに……なんでわしは、天下の猛者たちの『お悩み相談役』として、こんなにも必要とされているんだ……?)


光秀は月を見上げ、ぽつりと呟いた。

「……まあ、夢の通りに滅びるよりはマシか」

「ええ、殿。滅びるより、ずっとずっと素敵でございます」

煕子は優しく微笑み、光秀の肩に頭を預けた。

しかし、平和になりすぎた戦国時代に、ついに最後の「大波」が近づいていた。


次回、最終話(第10話)。

「光秀の終活」から始まった大暴走劇が、ついに感動(?)のグランドフィナーレを迎える!


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