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聴いてはいけないの?

「そう。。新しくね、事務所を立ち上げた訳なんです」

高級そうなスーツを身にまとい、サングラスの奥からテレビカメラを見つめるその男は、元大手芸能事務所で専務をしていた業界でも有名な人だった。

その男が独立して新しく芸能事務所を立ち上げたというニュースだった。

夜巳 幻子(よみ げんじ)』という男の名前がテロップで表示されている。

来海の目にはそのテロップの文字がうねうねと動きムカデのような禍々しいものにさえ見えた。

その時、工房の電話が高らかに鳴った。

「はい、SOra工房です」佳奈が受話器を取った。

「えっ、、あ、はい、、あの、どちら様ですか?……サクザンさま?」佳奈がそこまで喋ると、来海がすぐに受話器を引き取った。

「はい。来海です。えっ、潤ですよ、来海潤!そうです、はい! ! ははは、愬山(さくざん)さんほんとにお久しぶりです」来海はそんな感じで初めは明るい声で話していたが、段々とトーンが下がってきて最後はヒソヒソ声になっていった。

「ええ、テレビ見ています。。はい、そうですか、はい…………」来海の様子から何やら深刻そうな内容だとわかった。

受話器を静かに置くと、来海は無言で自分の作業場所へと歩いて行った。

佳奈は君香の作業を手伝いながら、何事だろうと案じた。


テレビでは、夜巳幻子が自身でプロデュースしたという男性音楽ユニットが紹介されていて、そのデビュー曲が流れ始めた。

4小節ほど聞こえたところで、少し離れた場所にいた来海が走ってきて突然テレビをハンマーで叩き壊した。ガシャン!!

「きゃあ!」佳奈はビックリして飛び上がった。

「いったいどうしたんですか?」君香も尋常じゃない来海の行為にビビっていた。

「今の曲!今流れた曲の歌詞!まずいぞ、、間違いない!”乱”だ!」来海が怖い顔でそう叫んだ。


世界には陰と陽、正と負のように反対方向に働く力が必ずある。

来海のばあちゃんや母親が築いてきた呪文の反対を成す言葉も存在するのだ。

『整』に対して『乱』

整が世界の秩序を整える言葉としたら、乱は秩序を乱すもの。


「今テレビから流れていた曲。あれを聞き続けると社会がじわじわととんでもない方向に動いてしまうぞ!」

来海は先程の電話の内容とともに、何かただならぬ事が日本に起きようとしていると感じた。

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