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乗り込むんですか?

結局、その後愬山の小屋にたどり着けたのはわずか3人だけだった。

全国に十数人いた愬山の弟子達がほとんどやられてしまった事は衝撃であった。


佳奈がお茶を入れてリビングのテーブルに並べる。

トチの木でできた1枚板の長いテーブルには12脚の椅子が備え付けられていて

端から来海、愬山、流星、風太、双子の萼と蕾。

向かいあった反対側にはようやくたどり着いた3人が座っていた。


(かすみ)さん達がやられてしまったのは本当に信じられません」

その3人のうちの1人服部晃(はっとりあきら)がそう口にした。年齢は38歳、普段は税理士をやっているというだけあってスーツを着て身だしなみはバッチリな感じである。

「服部さんは”修行”の時、よく霞さんと一緒だったんですよね?」

隣に座るショートカットの女性が服部にそう言う。彼女は長坂樹里(ながさかじゅり)年齢は29歳、優しそうな瞳と美しいネイルが目を惹く。


「霞さん、よく服部さんと競い合ってたもんなぁ」

長坂の横に座るガッチリとした男性が少し笑みを漏らしながら大きな声で続けた。

名前は出田将司(でだまさし)年齢は30歳、プロレスでもやっていたのかと思うほど、体型がガッチリしている。


愬山が皆の顔を見て、ゆっくりと神妙に言葉をだした。

「もう、日本にいる”整”の使い手はここにいる者達だけとなってしまった」

皆の喉がゴクリと鳴った気がした。

その時、リビングに入ってくる人影があった。


「私もいるからね」

メグミであった。

肩と足に包帯を巻かれて、ゆっくりとみんなの所に歩いてくる。

佳奈が手を貸してやりメグミもテーブルについた。


「大丈夫なのか?」愬山が聞くと、メグミは頷いた。

そして、「うわぁー、これ、薬草茶?苦いんだよなぁー」と言うとメグミ(かのじょ)は目の前のお茶を口に運んだ。

皆が笑った。


「そうだ!昨日、深夜3時までかかって何とか設定終わりましたよ!」

風太が愬山に向かってそう言った。

「おぉ!そうか、ありがとう、ご苦労だったね!」

愬山はそう言うと、皆を別の部屋へと(いざな)った。


君香が寝ている寝室を過ぎた先の部屋にぞろぞろと全員が入ってゆく、そこには1台のパソコンが置いてあった。

風太はこういう事が得意らしくて、愬山に設定などを任されていたのだ。

風太が電源を入れると1分くらいして、パソコンモニターに何やら文字が表示されてやっと使える状態になった。

カタカタとキーボードを弾く風太、すると画面にはたくさんの英語が並んでいるサイトが現れて、皆がそれを覗き込んだ。

長坂樹里は英語が堪能らしく、そのページを翻訳してみんなに伝える。

「これから、、始まる、様々な、儀式、によって……」少し詰まりながら読む長坂。

「うーん、文が読みづらいなぁ、それにこの単語なんだろう?incantation、、呪文?。。あっ、、、う、、うぐっ!」長坂は突然苦しみだし、自分で自分の喉を締め上げはじめた。

「う、、うぐぐ!」

「長坂さん!!」出田が持ち前の筋肉パワーで長坂の手を掴み喉から引き剥がす!

近くにいた全員で長坂の身体を押さえつけ地面に倒して動けなくした。

「うぐ!う、、ぐ、、、う、、」

しばらくすると長坂は身体の力が抜けたようになり、そのままスっと眠ってしまった。


「愬山さん!これは?」

来海がそう口にした。

風太はパソコンの電源を落として

「さっきのは、おそらく夜巳が作ったサイトです、、そのページの中に英語で”乱”が忍ばせてあった、、」

風太は愬山に頼まれてそのページの事を調べていたのだが彼は英語はあまり出来ず、辞書やパソコン雑誌を見ながら進めていたため直接英語の”乱”の影響を受けずにすんだらしい。

英語が堪能な長坂は脳に直接それが入ってきて呪いを受けてしまったのだ。


()(ごと)、、みたいだ」

来海がポソリとそう言った。

愬山がそれを聞いて「確かに、潤くんのお母さん”清美”さんが貧しい人々を助けるために”整”の言葉を書いた紙を渡していたな、”貼り言”。そうだ、書いた文字を見るだけで影響を受けてしまう貼り言だ」


もともと精霊に言葉を届け、なにかをやってもらうのが”整”なのだが、紙に書いた文字自体にも精霊は宿ると考えた清美は見るだけで効果を発揮する文字の組み合わせを長い事研究した、それこそが『貼り言』であった。

パソコンモニターに表示される”乱”の文字列も基本的に同じ構造であった。


「これをいろんな人が見ると思ったら、、恐ろしいです」

来海が声を震わせて言う。


「アメリカでもまだインターネットをやっているのは人口の8パーセントくらいで、、このページにたどり着くのはごくわずかかと、、」

風太がそう説明すると

「あっという間に普及するだろうな」愬山が正答した。


「インターネットが普及する前になんとか夜巳たちを倒さなければ!」

来海が拳を強く握り、そう発した。

部屋にいる全員がそれぞれ頷き、目を見合った。



「敵の攻撃はじわじわと広がっている。我々もいつまでも受け身でいる訳にはいかない。潤くんと話していたんだが、敵の本丸に奇襲をかけようと思う!」

愬山が腕を組み正面を睨みながらそう言った。


「本丸?」

佳奈がどこだろうという顔で尋ねた。


来海が答える。「東京、赤坂の夜巳プロダクションだ!」

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