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22/22

可愛いですか?

トヨタのハイエースとタートル号。2台の車に分乗して国道を走る愬山と弟子、それに来海たち。

そもそも、愛知県で集合したのには訳があった。

来海の母であり”整”の創始者でもある清美の墓があるのだ。

そこは愬山たち”整”の使い手たちの聖地となっており、呪文の力をアップできるパワースポットでもあった。


清美の墓は明神山から車で30分ほどの場所にある。

ごく普通の墓地にある墓なのだが、清美に助けられた沢山の人が足しげく通い、いつもお供え物であふれていた。

来海もここに来るのは2年ぶりだった。


墓石の前で線香を焚き合掌して頭を下げる来海とメグミ。

その後ろに並ぶ愬山たちももちろん合掌と礼をしている。


「母さん、なかなか来れなくてごめんね」

来海は持ってきた酒を墓石にかけてあげた。



「ミャーゴ」

ふと、近くで猫の鳴き声が聞こえた。


「ん?メグミ、猫の声がした?」

来海が墓石の周りをキョロキョロと見回した。

「したねー!猫の声」メグミもその辺の茂みを覗き込む。


すると墓石の裏からすぅーっと猫が1匹現れた。

「ミャーゴ!」

白と黒のまだら、顔はいわゆるハチワレであった。


「えっ!?る、瑠璃?」

猫を見るなり来海が驚いて声をあげた。

昔、母親の清美が飼っていた猫にそっくりだったのだ。

「いや、まさかな、、もう30年くらい前だし、、」

ハチワレ猫は来海の足元にスリスリすると、そのままひょいと肩に飛び乗ってきた。

「えっ?めっちゃ懐いてる!」メグミがびっくりした顔で猫を見た。

「「正しくは29年前だ、、」」

猫が来海の耳元でそう(ささや)いた。

「うわぁ!」

来海は驚き飛び上がるが、猫は肩に乗ったままだ。


「「私は、お前たちの母親清美の使い魔だった、覚えておるか?」」

猫は瑠璃色の瞳で来海を覗き込む。


「ほ、、本当に瑠璃なんだ!凄い!」

来海はまるで母親を懐かしむようにハチワレ猫を抱きしめた。


***


昭和30年、来海の母清美は道端の草むらの中で、息も絶え絶えでボロ雑巾のように横たわる猫を見つけた。


日本は貧しく、人間が明日食べる物すら心配しなければならなかった時代。それでも清美は自分のご飯を減らしてでも猫に分け与え『瑠璃』と名前をつけて可愛がった。


その名の通り美しい瑠璃色の目をしたその猫は、実は身体の中に怨霊を棲まわせていた。

戦争で焼かれた神が怨念を(いだ)きながら猫の身体に乗り移っていたのである、そのままいけばあの”厥狐(けっき)”のような邪悪神になる、、まさにその1歩手前であった。


本当に貧しい時代、人は猫の肉をも喰らい、その皮は三味線の材料として売り飛ばされていた。

まさに、そういう連中に瑠璃は目をつけられてしまった。

ある日、清美の住居の裏で瑠璃が昼寝をしていると、突然3人の男がやってきて瑠璃(かれ)を捕まえると、袋にねじ込みそのまま連れ去ろうとした。

瑠璃は恐怖でつい邪悪な神を解き放つ寸前だった、しかし

「お待ちなさい!」清美が袋を抱えて走り去ろうとする男たちに声をかけた。


「なんだてめえ!」

男たちは清美に食ってかかる。

「その猫を置いて、去ってください、お願いします」

清美は丁寧に頭を下げて頼んだ。

「へん!冗談じゃねぇ!知ったことか!」連中は悪態をついて立ち去ろうとする。


「これをお持ちなさい、その代わり猫は返していただきます」

清美はそう言うと、首元からさげているネックレスを外して男たちに差し出した。

それはオーストリアの母からもらった唯一の形見であった。

当時の日本では珍しいオパールのペンダントトップが付いた美しい装飾のネックレスだった。

男たちはそれを見ると目をギラつかせひったくるように持ち去ると、瑠璃の入った袋を放り投げていった。


「大丈夫かい?」

清美は袋から瑠璃を取り出すと、優しく撫でてやった。


「お前はずっとそばにいてくれね」

清美は優しくそう言って抱きしめた。

その瞬間、、瑠璃の中の黒いもやのようなシミがすぅーっと消えてゆき、長い間抱えていたオリモノのようなものがはがれ落ちていった。。


それから瑠璃は清美のもとから一切離れず使い魔のようになった。

後日の事、ネックレスを手に入れて味をしめたあの男たちが、まだ宝石を持っているのではないかと思い、清美の住まいに押し入ろうとやって来た。

手には千枚通しや小型のナイフまで持っている。


男たちが家の中を盗み見ると、瑠璃がちょこんと座りこちらを見ていた。

「またあの猫だ!盗る物がなんもなかったら、またあの猫を連れていこう!」

そう言いながら家の中へと入っていく。

清美は不在であったのが幸いだった、はち合わせすると乱暴をされるおそれもあったからだ。

玄関を蹴破(けやぶ)り、部屋の中に土足で踏み込む男たち。金目の物がありそうな場所を探し、あちらこちらをひっくり返していく。

その男たちの後ろ、なにか大きな影がゆらりと動いた。

気配を感じて1人の男が振り返って、目を見開いてわめいた「ひぃ!ば、化け猫だぁ!」

そこには、部屋いっぱいの大きさになった瑠璃が二本足で立ち、鋭い爪を広げ、ギラギラとした目で男たちを睨んでいた。


「ぎゃぁ!」


「ちくしょう!この!」男の1人がナイフで刺そうとするが、瑠璃の鋭い猫パンチが飛んできて一瞬で頭をもがれた。


「ひぃ!」

たまらず他の2人は部屋から飛び出す!

瑠璃はバッと飛び上がり男たちの前に降り立つと、1人の首に食らいつき、その状態で両足猫キックでもう1人を蹴っ飛ばし内蔵を破壊した。

3人の男たちを亡き者にしたあと、猫は元のサイズにしゅるりと戻り、何事も無かったように手を舐め顔を洗うような仕草をした。


***


主人の清美を失って30年あまり、それでも瑠璃は彼女の墓から離れられないでいたのだ。

そして、清美を殺した相手に復讐をする機会を待っていた。

夜巳の母親は清美がやっつけたが、次は4兄弟が復讐の相手である。

「「私も連れてゆけ」」瑠璃はそう言うと来海たちと一緒にタートル号に乗り込んだ。


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