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弟子になれますか?

「もちろん簡単に覚えられるものじゃないって事はわかっています!でも、せめて自分や家族を守れるようになりたいんです!」君香は土下座しそうな勢いで来海とメグミに頭を下げた。


さっき巻き込まれたスクランブル交差点での事件。

無惨にもコンクリートに叩きつけられて血まみれになっていく人々を間近で見てしまった。

おそらく命を落としてしまった方も多くいたに違いない。

あれが自分の家族だったらと思うと君香は心底恐ろしくなったのだろう。


「いや、危険すぎる。”整”に関われば確実に”乱”から狙われる!」来海には、それは容認できなかった。

「でも、今も狙われてるんですよね!」君香が食い下がる。

隣で聞いていた佳奈も、これは他人事ではないなと感じたが、”整”を体得するなんて自分にはとても怖くて出来ないと思った。


少し場を落ち着かせるようにメグミが間に入ってきて

「あのね、、私も潤兄さんも、人に”整”を教えた事がないのよ」と言った。

それをそばで聞いていた来海も頭を掻きながら頷く。



ゴゴオォォォォ、、

さっきまで遠くに聞こえていたエンジン音がしだいに近づいて来て、だんだんと耳を貫くほどの轟音になってきた。

「なに!?」佳奈が叫ぶ。

「飛行機だ!近いぞ!」来海が慌てて外を見に行く。


***


今、日本全国には15人ほどの”整”の使い手がいた。しかし来海とメグミを除いてはほとんどが全員愬山(さくざん)の教え子だった。


愬山は粕谷(隣のおばあちゃん)と同じくらいの時期に来海の母である清美と出会った。

清美は戦後の混乱期に”整”を使って人々を助ける活動を熱心に行っていて、愬山もそんな清美に助けられた1人だった。


初めは『自分も困ってる人を助けたい』という一心で清美から”整”を教えてもらっていた愬山だが、いざやってみると愬山(かれ)にはことの(ほか)才能があった。

人々を助けるだけでなく、土地に()いた怨念を持つ神を鎮めたりもした。

そして、1960年に起こった”乱”との全面戦争

『昭和の整乱の戦い』にも参加したのだ。


当時、清美41歳、粕谷43歳、愬山20歳、来海15歳、メグミ8歳であった。

この戦いで最終的に清美が敵の(ボス)と相討ちとなり命を落とした。その死に際、清美は遺言のように「日本の人々を守るために整の使い手を増やして欲しい」という言葉を愬山に遺した。

愬山は清美のその言葉に応えるべく今まで生きてきたのだ。才能のありそうな人材を見つけては”整”の訓練、指導をしてきた。まさに、それに人生をかけてきたといっても過言ではなかった。

愬山に育てられた者たちは日本全国へと散らばってゆきその土地土地の”乱の神”を抑えている。


夜巳 幻子たちが言葉を使って怨念を持つ神(精霊)を操るのを”乱”と言うが、

八百万の神(やおよろずのかみ)がそのまま怨念を持って人間に危害を加える場合もあり、それは”乱の神”と呼ばれた。

第二次世界大戦で土地を焼かれた日本の各地に”乱の神”は発現した。

空襲を受けた東京や大阪、兵庫、神奈川、愛知……それにもちろん、広島、長崎。そして地上戦が行われた沖縄。。など、、

それらの場所では戦争の大きな炎で神物(しんぶつ)が焼かれ、昔からそこに()まっていた神たちは、苦しみ、怒り、だんだんと人間への憎悪を高めていった。まさに怨念の権化のようになってしまったのだ。

愬山の弟子たちはそれぞれの土地に赴き”乱の神”を鎮める術として”整”を用いていた。


***


ゴゴオォォォォ

飛行機の音だとわかるが、聞いたことがないくらいの爆音だった。


渋谷の宇田川町に「ホームメイドハンド」という店舗ビルがある。いわゆるDIY用品やおしゃれ雑貨などを取り扱うホームセンターだ。

今日もたくさんのお客さんで賑わうそのビルに、突然飛行機が落ちた。ドォゴォォーーン

当時の旅客機の主流でもあるジャンボジェットだった、、そしてその激突の衝撃波は800m離れているSOra工房をも揺らした!

爆音、爆風。そして燃料のケロシンは一気に燃え上がり100mを超える爆炎を上げた。

辺りのビル、道路の車、歩いていた人々を呆気なく吹き飛ばし、直径500mの範囲に瓦礫と熱風煙を撒き散らした。


来海は慌てて工房の外に出てホームメイドハンドの方を見た。

ビルの隙間から轟々と立ち上る黒煙が見える。上空には爆発で飛ばされてきた軽い素材が漂い、ゆっくと地面に落ちてきた。

来海に続いてメグミも飛び出してきた。

「潤兄さん!これは!?」

「工房は結界を張っているから敵からは見えない、だから大体この辺りだろうという場所に飛行機を落としてきたんだろう!」来海が怒りと恐怖の入り交じった声でそう答える。

それを後ろで聞いていた佳奈が声をうわずらせて震える。「そ、そんな……」

工房の前の道は上空から降り落ちてくる紙のような破片によって埋め尽くされていった。

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