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10/22

これは攻撃ですか?

佳奈は練馬の自宅アパートを出ると電車を乗り継いで渋谷駅まで来る。

そこからは徒歩で工房までの道を通っていた。


今日もなかなか混んでいた山手線を降りるとハチ公の出口からスクランブル交差点へと進んだ。

スクランブル交差点が赤だったので、手前で待ってなんとなく周りを眺めていた。

1人の男性が目に入った。ヘッドホンを着けてポータブルカセットプレイヤーの音楽を聴いているみたいだが何かがおかしい。

虚ろな表情で空を見上げて何かをブツブツと言っているようだった。

『東京の渋谷だし、ああいう人もいるんだろうなぁ』と思いながら青になった交差点を渡り始めた。

佳奈は少し進むとなんだか胸が苦しくなってきた、『なんだろう、何かに締め付けられているような、、』そう思っているとますます苦しくなってきた。

気がつくと佳奈以外にも近くにいる何人かの人が不思議な行動をとっていた。

「なに!?なんなの?」佳奈がよくよく見ると、肩から斜め掛けしている自分のバッグの革ベルトが身体を締め付けているのだった。ギュギュ、、音をたてるように革ベルトは縮んでゆき佳奈の肩、首元、胸を締め付ける。

「痛い!!」初めはそう声に出せたが、次第に苦しすぎて息すら出来なくなってきてしまった。

手でベルトを外そうとするが締め付ける力が強すぎてまったく歯が立たない。

「う、、く、、くる、し、」佳奈の意識が薄くなってきたその時、後ろから佳奈を抱き抱える人物がいた。君香だった。

たまたま出勤の為に同じように交差点にいた君香が佳奈の異常を感じてポケットから”マルチツール”を取り出した。マルチツールとは、手の上に乗るくらいの小さなボディの中にドライバーやナイフ、ハサミやヤスリなどのツールが折りたたまれて収納されているものだ。

君香は折りたたまれたナイフを引き出して佳奈の胸を締め付けている革ベルトを断ち切った。

「はぁ、、はぁ、、君香さん、、」佳奈は君香が来てくれたことに、今気づいた。

「大丈夫?」君香は佳奈を見てそう言った。

「はい、ありがとうこざいます」間一髪、佳奈は(こと)なきを得た。

周りを見渡すと、たくさんの人たちが吹っ飛ばされたり、振り回されたりしている。

どの人も、自分が身につけている革製品(バッグや財布やベルトなど)に身体を痛めつけられているのだ。

腰に巻いている革ベルトに持ち上げられて地面に叩きつけられているサラリーマン。

バッグの肩紐に引っ張られて道路を引きずり回されている女性。

スクランブル交差点があっという間に血にまみれた。

交差点そばの交番から警察官が2名やって来て唖然としている。見たこともない光景に彼らは無線で応援を呼んだ。

交差点内ではすでに10人くらいの人が倒れてぐったりとしていた。

人をすでにやっつけた革製品達はスルスルと人間から離れ、だんだんと1箇所に集まってきた。

交差点の真ん中に集合するとそれぞれが絡み合い繋がり、まるで1匹の大きな蛇のようになっていった。

1人の警察官が拳銃を手に持ち近づき、もう1人は無線で現状を報告しながら警棒を抜いた。

その警察官たちに向かって革の蛇が飛びかかる!

拳銃を持った警察官の首に巻き付くとあっという間に骨を砕いた。バキバキ!

「ひぃ!」もう1人の警察官が腰を抜かす。

しかし、その警察官が身に付けている革製品(拳銃のホルダーやベルト、帽子のつばなど)が彼に攻撃をしてきた。「うわぁっ!!」帽子のつばは口に刺さり、腰のベルトが締め付け、、そこにさらに蛇が突っ込んできて彼は一気に血を吹いて絶命した。


「佳奈ちゃん!逃げよう!」君香がしゃがみ込んでいた佳奈を立ち上がらせ肩を抱えて走り出す。

人々の悲鳴、車のクラクション。

スクランブル交差点は大パニックとなっていた。

『シュルル!』走っている2人の足にどこからか飛んできた革ヒモが巻き付き、佳奈と君香は思いっきり転倒してしまった。

振り向くと8m先に、革の蛇がさらに大きくなってこちらに向かってきている。

「佳奈ちゃん立って!」君香と佳奈は必死に立とうとするが、足に絡まった革ヒモはきつく締め上げていて取り去ることが出来なかった。

蛇が彼女たち目掛けて飛びかかった!

その時。スクランブル交差点の車道と歩道を隔てる金属柵のひとつがぐにゃりと柔らかく曲がると地面から抜けて蛇の方に飛んできた!

蛇に勢いよくぶつかると、金属の柵は形状をぐにゃぐにゃと変え、まるで人間のように2本の棒部分で地面に降り立った。

「えっ?」佳奈は驚いた。「これは、敵?それとも助けてくれたの?」君香もそう言う。

革の蛇は飛び上がり、一旦怯んで退いた。

その隙に君香は急いでマルチツールのナイフで足に絡まったヒモを切る!するとそんな2人の前に、女性がスっと現れた。

蛇はどんどん周りから集まってくる革製品によって、さらにひと回り巨大化していく。

佳奈たちの前に現れた女性は指を立て文字を切りながら「たてまつりしたたらたきみのむかおうかのものに」と唱えた。するとスクランブル交差点に備えつけられていた信号機が6本、コンクリートの地面を破り、配線ケーブルを引きちぎりながら上空へと昇った。

そしてそのまま革の巨大蛇に向かって落ちてゆく。

ドドーン!激しい音と共に信号機6本が突き刺さる。しかし、蛇は一旦バラバラの革製品に戻って散らばり、また別の場所に集合するとそこで蛇の姿に戻った。

女性は今度は左手を前に出して広げ、右手の人差し指でくるくると輪を描いた。

しかし、すぐには何も起こらない。女性は指のくるくるを続ける。

蛇は少し様子を伺っていたが、機をみてスルスルと地面をすごいスピードで這って近づいてきた。

女性は目を閉じ、集中して指を回し続ける。

蛇は女性の足元まで来て彼女の身体に巻きついた!

ボワン!

瞬間、スクランブル交差点の様子が急に変わり、空気中の水分が突然1箇所に集まってきて水の塊を作った。

その塊は直径1.5m程にもなり、女性もろとも蛇を飲み込んだ。水は革製品のひとつひとつに染みてゆき、その細かい繊維を一気に柔らかくして引きちぎり始めた。

たまらず蛇は一旦バラバラになるが、それぞれの革製品には水がこびりつき革の組織を崩して、ほつれさせた。

バラバラと散らばって地面に落ちてゆく革製品たち。ビクッビクッっと断末魔の動きをすると革製品たちは沈黙した。

女性はゆっくりと目を開けると、振り返って。地面にしゃがみこんでいる佳奈に手を伸ばした。

「大丈夫?」女性は微笑みかけ、佳奈を引き上げた。

「ありがとうこざいます」佳奈はそう言いながら女性に頭を下げた。


ブッブー!

そこにタートルがやって来た。

運転席から来海が飛び降りると佳奈たちの元に駆け寄った。

出勤途中のタートル内でラジオのニュース速報を聞いて来海は飛んできたのだ。「まさか、2人が巻き込まれていたなんて、、大丈夫かい?」来海が心配そうな顔で聞くと、君香が「あの方が助けてくれたんです」と言った、するとその女性は来海を見るなり声をあげた

じゅん兄さん!」

来海も驚いて振り返り女性を見た

「あっ!メグミ!、、おまえが助けてくれたのか?」


先日、電話では話したが、実際に会うのは10年ぶりの兄妹だった。


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