優しいからこそ凹む君(百合。社会人同士)
日曜日。昼下がりのフードコートにて。
私の前に、暗い顔でラーメンを啜る女が居る。
我が恋人は、普段は太陽のように明るいのに、落ち込むととことん暗くなる。
そういうところも好きだけどね。
「……」
同じようにラーメンを啜り、順調に食べ切ってから私は言った。
「そう凹むなよ」
「うん……」
凹みながら食べている所為か、彼女の箸の進みは遅い。
うーん、勿体ない。ここは麺が美味しいのに。
和風出汁のしっかり効いたスープも、彼女の心を癒さないみたいだ。
「しょうがないよ。カートをスケボー替わりにして走り回ってさ、危なかったもん。実際、ちっちゃい子にぶつかりかけてたんでしょ?」
「でも、琴子が警備員さん呼びに行ってたのにさぁ」
そう。彼女は、危険行為をしていた子どもたちを注意したことに対して、凹んでいるのだ。
大人として、寧ろいいことをしたと思う。
ちっちゃい子にあんなスピードのカートが当たっていたら、とか。考えるだけで怖いもん。
ビビりの私は、報復を恐れて警備員さんを呼びに行った。我ながら姑息な手だと思うが、その点、加奈子はすごい。
いや、あまり危ない真似はして欲しくないのだけども、それはそれとして。
「けど、加奈子が咄嗟に止めてなきゃ、もっと危なかったんだから。いいんだよ」
「ガキ相手に、あんな大声で叱り飛ばさなくて良かったな、とも思うんだよね。危な過ぎてビビッてさ、つい大声になっちゃった。悪いことしたな」
悪たれにビビらされたんだから、ビビらせ返してもいいだろ、と私なんかは思っちゃう。
でも、加奈子はそこを反省するのだ。
「それに、その所為で警備員さん来る前に逃げちゃったし。現行犯で注意してもらえば良かった」
「……本当に、加奈子は優しいなあ」
私は感動して、思わず手を伸ばした。
「なに撫でてんの」
「えー? フードコートの平和を守ったんだから。撫でるに決まってるっしょ」
彼女の頭を何度も撫でる。
いい子偉い子。
がんばったって。
すごいよって。
「……ありがとう」
彼女が、困ったように眉を下げて微笑んだ。
「なーんで。当然のことだよ」
私も笑って答えて、彼女が食べ終わるまで、ただただその頭を撫でていた。
END.




