94/135
私を、呼んで?(同棲百合)
「水樹」
自分の名前が、好きだ。
「ねえ、水樹」
貴女に呼ばれる、自分の名前が好き。
「ん、どした?」
だから、呼ばれるとすぐに貴女の方を見てしまう。
きっと、だらしなく頬が緩んでいるのだろうなあと内心苦笑しながら。
でも、止められない。
「あのね、これなんだけど……」
だって、私が振り向くと、貴女は心の底から嬉しそうに笑ってくれる。
眉を下げ、眼を細め、ふにゃんという言葉が似合うほど柔らかに。
にっこり笑ってくれるのだ。
自分の行動一つで、誰かがそこまで倖せそうに笑ってくれるなんて。胸が躍って仕方ない。
その上、私の名前をまるで宝物の如く、大事に口にするものだから。
私はまた欲張りたくなる。
もっと呼んで、というように、私は貴女の呼びかけに笑顔を向ける。
「水樹」
敢えて別の用事をしたりして、ちょっと誘い込むようなズルをしつつも。
「なぁに?」
私は、貴女を待っている。
END.




