初めてのちゅーは、夕陽色(百合。真面目×自由人。付き合い始めの頃。高校生)
「あ、の、キスしても、いいですか……っ」
夕暮れの帰り道。
夕陽に照らされた馨くんが、顔を真っ赤にしてそう言った。
「え? いいよ」
西日と赤面の両方で真っ赤っかになっている彼女の横顔が綺麗で、可愛くて、私は「好きだなあ」と思いながらそう返す。
「っ、あぁぁぁあ~~~……」
私は了承したのに、何故か馨くんは間延びした声を上げ、いきなりその場にしゃがみ込んだ。
え? 何で?
「何、どうしたの」
私も同じようにしゃがむ。
まだ何も建っていない宅地が並ぶこの道は、人通りがほとんど無い。だから、邪魔にもならないし、変な目で見てくる通行人も居ない。
「……何か、恰好悪いなと思いまして」
「そう?」
「もう少しスマートに言いたかった……」
あああ……と呻いて両手で顔を押さえる馨くん。私は思わず微笑んだ。
「いいなって思ったけど」
「……ええ?」
指の間から、疑わしげな声が漏れる。
「だって、勉強も運動も出来て、真面目で人望も厚い馨くんがさ」
「いや、そんな出来てないです、私」
「話の腰を折るな」
「すみません」
「まあ、そんな馨くんのさ、いっぱいいっぱいなところを見られるのは、恋人である私の特権でしょ?」
彼女の顔が少し上がる。視線が合う。私の口から、ふふっと勝手に笑いが零れた。
「だから、いいなって思うし、嬉しいなって思うよ」
「ミイさん……」
ね、馨くん。呼びかけて、小首を傾げる。
「キス、しないの?」
「……します」
私の問いに、真剣な眼差しで彼女が答えた。
馨くんの手が私の頬に伸ばされ、捉える。
私は大人しく、近付いて来る彼女を待った。
ちゅ
恐る恐る合わさった唇は、思ったよりも柔かった。
「……目、何で瞑らないんですか」
「そっちこそ」
至近距離で見つめ合ったあと、二人同時に噴き出した。
「あーもう。全然決まらなかったです」
「でもいいじゃん。出来たじゃん」
今度は、私から顔を近付ける。
唇を狙って……何故だか急に恥ずかしくなり、頬にした。
「何で口じゃないんですか?」
「……ええ? 何となく」
そう言って、私は立ち上がる。
「もしかして、照れてます?」
「さ、帰ろ」
返事をはぐらかす私に、馨くんが楽しそうに声を上げ笑った。
立ち上がった彼女の手が、私の手を軽やかに掬い取り、ぎゅっと繋ぐ。
次は照れないでキスしてやろうと、こっそり誓った。
END.




