出逢ったあの日に鳴った歌(同棲百合。真顔系クール女子×ダイナマイトマッスルボディ高身長女子)
こちら(https://ncode.syosetu.com/n9047lt/62/)の二人の出会い
オタクの毎日は忙しい。退勤してからが、本番だと言って良い。
「さて、デイリーこなすか……」
脳死周回タイプのゲームや、何かを確認したりするタスクなどは、通勤時間や休み時間にこなしている。えらい。
食後の今こなすべきは、音ゲーのデイリーないしはイベントタスクだ。
淹れたお茶を安全圏に置き、スマホを台(音ゲー専用の台がある)にセット。
気合を入れて、アプリを起動した。
「久々に昔の曲やろうかな、と」
スワイプし、初期曲のあたりに差し掛かったとき。
「あ」
ある曲名が目に止まり、一気に脳内が高校時代へと戻る。
キーンコーンカーンコーン……
チャイムの音に、バッと顔を上げた。
(やっべ、寝てた。時間は……)
壁時計を見れば、ちょうど一限が終わった時間を示している。
(良かったー! 休み時間になったばっかりか! やべぇやべぇ寝過ごすところだった)
終わりの挨拶もそこそこに椅子へ座り直し、スマホを取り出した。
(イベント、回さんと!)
当時は、この音ゲーにハマりたてで、少しでも上のランクに乗りたくて必死だった。
結果、家でも遅くまでノーツを叩き続け、学校でも休み時間すべてをゲームに捧げ、足りない睡眠時間は授業時間で補うという暴挙に出ていた。
高校一年生。周りが新しい友だちを作る中、私はイベランを走るのに夢中だった。
(よし、何とか休み時間に出来る分はこなせた!)
スタミナを使い切り、ひと安心。結果画面に浮かぶ推しの笑顔に、心の中で微笑みかけた(多分、顔はずっと無表情だった)そのとき。
とんとん、と後ろから肩を叩かれ、吃驚した。
(後ろ……確か伽羅橋だったっけ。身体でっけー子)
背も高い彼女は、やはり少々怖かった。ほとんど喋ったことも無かったし。
「な、なに?」
ゆっくりと振り返る。
(音切ってるけど、ノーツ叩いてる音がうるさかったかな……)
怒られるか? と冷や冷やしたが、振り返って見た光景は。
自分のゲーム画面を、誇らしげに見せる彼女の姿だった。
曲が終わったあとの結果画面、今、私の手元にある画面とほぼ同じものだ。
私は一瞬固まったが、しかしおもむろに右手を差し出した。向こうも流れるように右手で私の手を受け、がっしりと握手。
笑顔で、頷き合う。
嬉しかった。
同志に初めて会った瞬間だった。
……が、その後私たち二人がきちんと言葉を交わしたのは、六限の移動教室の時だった。
お互いゲームのイベランを走るのに忙しく、話す暇が無かったのだ。
──それもまた、伽羅への好感度と信頼が高まる理由になったのだけど。
END.




