新年の抱負は(百合? 義理の姉妹)
時期はお正月くらい
上機嫌で帰って来た慧花が、手にした袋を掲げて言った。
「まりな~、見て見て、紅白スコーン~!」
「……。何ですか、それ」
半眼で見上げる自分にへこたれず、彼女はご機嫌なまま手の中のものを説明する。
「紅白スコーンは紅白スコーンだよ。赤と白のスコーン。アンダスタン?」
「質問を変えます。何味のスコーンなんですか?」
親同士の再婚で、私の義理の姉となった慧花は、今年二十歳になる。しかし、五つ下の自分よりもよくはしゃぎ、子どものように無邪気に笑った。
共に暮らし始めて約一年。その無邪気さが眩しいくせに、つい鬱陶しそうに対応してしまう己が悔しい。
だが、そんな私を気にするでもなく、
「何と、み・そ。白みそと赤みそだよ~」
彼女はいつも通り笑ったままだ。
「それ、美味しいんですか?」
「一個余分に買って、試しに食べてみたんだけど。これが、すっごいイケる」
あっためるね~と言って、彼女はさっと台所へと入っていった。
「まだ食べるって言ってないのにな」
つややかなショートヘアは動くたびにさらさらと流れて美しく、くりくりの癖毛である自分の髪が、少々疎ましく思えてしまう。
このちょっと素直になれない性分も。
「まりな~、お茶の用意してくれる? 緑茶が合うんだってさ」
「はいはい、仕方ないなぁ」
だけどそんなこと、彼女は構わない。
ただ真っ直ぐに私の名前を呼んでくれる。
(今年は、もう少し素直になれたら)
密やかな新年の抱負は、私だけが知っていればいい。
「ねえねえ、秘蔵の玉露入れちゃおうよ」
「……バレたとき、一緒に怒られてくれるなら」
「あったぼう!」
台所に、みそとお茶の豊かな香りが漂い始めた。
END.




