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初恋の味と呼べるもの(歳の差男女。年上×年下。どちらも成人済)
「はい、おひいさん。チョコピーナッツクレープ」
「ありがとうございます」
嘉助さんが、買って来てくれたクレープを渡してくれる。私はそれを恭しく受け取った。
日曜日の昼下がり。
フードコートには楽しそうなお喋りの声や笑い声、甘い匂いや香ばしい匂いが満ち満ちている。
「でも、本当にこれで良かったの?」
他にもアイス入ってるのとか色々あったよ? と彼が首を傾げる。
「はい。私、クレープではこれが一番ですから」
向かいへ座った嘉助さんを見ながら、私は微笑んだ。
手の中のクレープが、あの日の……もっと歪で、少し焦げた……クレープと重なる。
まだ嘉助さんが大学生で、私が小学生だった頃。
叔父さまに連れられ、嘉助さんの所属していたサークルの屋台へ遊びに行ったとき。
彼が、手ずから作ってくれたもの。
『はい。おひいさんにはおまけで、たくさんピーナッツ入れといたからね』
笑顔で渡されたそれの温もりと甘さを、私は今でも大事に、心の一番良いところに取ってある。
「……思い出の味なので」
「そうなの?」
「はい」
あなたはまだ知らない。
私の淡い、片想いの頃のお話。
END.
おひいさんの叔父さまと嘉助さんが親友同士。ちなみに二人とおひいさんは十歳差。
おひいさんはお嬢様なので、このときが初屋台クレープだった。




