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鳥になり損ねたと、いつか彼女は言っていた(同棲百合。恋人と姪っ子と三人暮らし)

 夜。読んでいた本から顔を上げて、唐突に小牧が問うた。

「櫻子ちゃんと美雨ちゃんは、どういうキッカケで『お友達』になったの?」

「んーとねぇ、結構シゲキ的なお話だからねぇ……」

「おい」

 出席番号が前後で、その所為で席も前後だったって話は前にしたはずなのに。意外と誤魔化されない子だ。

「だ・か・ら! 小牧ちゃんがオトナになったら詳しくおせーてあげる♡」

「ホント?」

「ホントホント! 櫻子ちゃんの優しさとかカッコよさとか、ガンガンお話しちゃう♡」

「おい」

「やった!」

 美雨の安請け合いに、内心焦る。

 ……自分たちがただのクラスメイト以上に話すようになったキッカケなんて、碌なものじゃなかった。

「ほら、だから今日はもうねんねしな~」

「本当だ、もうこんな時間」

 時計を見ると、小牧は素直に本を閉じた。

「おやすみなさい、また明日」

「うん、おやすみ。また明日~!」

 小牧が手を振り、美雨も明るく手を振り返した。自分も軽く手を振り返す。すると小牧は、にこっと笑みを深めて、ご機嫌に扉の向こうへと消えて行った。

「…………」

 からから、トン、と引き戸が閉まる。

『空、飛びたくて』

 その音と、あの日の美雨の言葉が、何故か頭の中で重なった。

 屋上で見た青空。眩しくて真っ青で、雲の少ない綺麗な晴れ空だった。肩で息をする自分。フェンスから引き摺り下ろした彼女は、そのときはまだ笑っていたんだったか。それとも。

「さーたん」

「……何だよ」

 こちらを向いた美雨が、にかっと笑った。

「だーいじょーぶだよ! 小牧ちゃんが、煙草もお酒も法的に嗜んでオッケーになってから、お話しするからさ!」

 のしっ、とこちらの膝へダイブしてくる身体は、あの日と同じに細く長かった。だけどあのとき感じた、重いのに重くない、薄っぺらな嘘臭さは無かった。

「自分の叔母さんが授業おサボり常習犯のヤニカスで、ついでにそのカノジョもそこでたまにサボってたなんてお話、せめて中高卒業してからじゃないとね!」

「……」

 こいつが真実を語る気が無いのを悟って、少しホッとする。

「そうだな」

 くしゃっ、と髪を撫でれば、

「えへへへ」

 とご機嫌に笑う。

「どけ、重い」

「まー、そう言わずに」

 べったり甘えて来る重みに文句を言えど、そこまで悪く思っていないのは秘密の話だ。


 END.




昨日のお話(https://ncode.syosetu.com/n9047lt/57/)の二人。櫻子と美雨と、櫻子の姪っ子の小牧です。三人は一緒に暮らしてます。

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