何でもないのに、湧き上がるもの(同棲百合。恋人と姪っ子と三人暮らし)
人間は不思議だ。
自分のことに関しても、そう思う。
例えば。
「ひーっはっはっはっ! ひーっ! うっそでしょ、ひひひ、はー!」
ベッドに寝転び、スマホで下らん動画を見て(私もその動画は好きだが)ゲラ笑いをしているこいつ。
大口を開けて、引き笑い。着ている寝間着は、何年ものだと言いたくなるくらいのヨレTシャツ。
恋人の私から見てもだらしくなく、色気もクソもない姿だ。
それなのに。
(……触りてぇ)
その髪に触れたい。顔の火傷痕にかかるそれをかきあげ、無防備な耳にキスをしたい。
そう強く願う。
簡単に言えば、欲情している。
こんな姿に。
「……」
手を伸ばして、まず髪に触れた。
「あ、さーたんも見る?」
こちらを見上げる目は、笑い過ぎて涙目だ。……それもまたそそる。
「いい」
「……さーたん?」
私の目に何かを感じ取ったのか、彼女が探るように私の名を呼んだ。
良い勘だ。ちょっと遅いが。
「美雨」
のしかかって、キスをする。ぬるりと舌が絡まり、欲情はいや増した。
新しい石鹸の匂いがほの甘く立ち上り、目端を朱く染めた彼女によく合っている。
「ちょっと。明日、朝早いんじゃなかった?」
「そうだな」
小牧と遊びに行く約束をした。私たち三人で。可愛い姪っ子との約束を破るわけにはいかない。
今ごろ向かいの部屋でぐっすり眠っているだろう姪は、私とこいつと三人で出かけることを何より楽しみにしているのだ。
「善処する」
「ほんとかよ」
そう言いながらも、美雨の腕が私の背に回された。彼女の瞳にも、欲の光が宿る。
「お前が煽らなかったら、大丈夫だ」
「なにそれ責任転嫁は流行らないよ~?」
何でも無い夜が、いきなりこうして熱く盛り上がることになる。
本当に、人間は不思議だ。
END.
3/27更新『今更冗談とは言えない本気度で』(https://ncode.syosetu.com/n9047lt/43/)の二人。




