ずっと続けばいいのにね(女子高生。百合? 片想い?)
昨日のお話の、もう一人が主人公です
朝の教室が、好きだ。
あの子との時間が、好き。
「最新話、読んだ?」
「よ、読んだ! すっごい、すごかったね!」
きらきらした、白い光に満たされた朝の教室。
私が自分の席に荷物を置くと、前の席の彼女……真名井が早速ふり返って話を振ってくれる。
「何か、もう、ナナミの感情が、こう、ぐわって胸に来て……! わた、私、泣いちゃった」
ついさっきのことだ。家を出る前に読んで号泣して、気付いたらもう登校時間で、慌てて飛び出したのだ。
「泣いたの、わかる」
「え」
「だって目、赤いもん」
「え!!」
私は、バッと目元を覆った。
覆ったところで、何も変わらないのに。つい、反射的に。
「わー……恥ずかしい」
「でも、泣いちゃうよね。私もバスの中で泣いちゃったもん」
「だ、だよね! あれ、でも目、赤くなってない……?」
「コツがあるんだよ」
真名井が言うには、泣いたら目元を擦らずに、そっとハンカチなどで優しく涙を吸わせるのがいいのだそう。
「へー……そうなんだ」
「そう。だからもうね、バスの中で、目頭をずっと押さえてる怪しい女になっちゃったわけよ」
「ふふふっ」
私は思わず笑ってしまった。
その姿を想像して。
なんて可愛いんだろう、とキュンとした。
「け、けど、本当に何か、勝手に、涙がバーッて流れちゃう感じだったよね。ナナミの感情が、なんか、すごい、ガーンって来るっていうか」
「ふふふっ」
今度は、真名井の方が笑った。
「どうしたの?」
「桜井、いつも国語学年トップなのに、感想のときは語彙力無くなるんだな~って思って」
真名井のシュッとした切れ長の綺麗な眼が、柔らかく細められる。
クールそうな真名井なのに、そんな風に笑うと途端に優しい雰囲気になって、もっともっとドキドキしてしまう。
「だ、だって仕方ないよ」
私は、そのドキドキを誤魔化すようにして言った。
「言葉を考えるより先に、感情が迸っちゃうんだもん」
「それも、わかる」
真名井が、小首を傾げて言った。
「いいよね、本当」
しみじみとした言い方は、こちらの心に沁み入って来るみたい。
「……うん」
私は言った。
「ずっと続いたらいいのにね」
ダブルミーニングだってこと、真名井はきっと気付かない。
それでもいい。
「そうだね」
彼女は、うんうんとうなずいた。
「本当に、そうだ」
深く味わうみたいにして、彼女は言った。
朝の光の中で、彼女の言葉は私の中に美しく溶けていった。
END.




