白い光の中で(女子高生。百合? ロマンシス?)
朝の教室が好きだ。
誰も居ない、ただ白っぽい朝の光に満たされている。
静かな朝の教室が好きだ。
一番乗りして、スマホを眺める。
今日は、好きな小説の更新日だ。
たいてい、朝の六時に更新されている。
私は、うきうきとアプリを立ち上げた。
後ろの席に人の気配。
「おはよう」の声に、ちらとだけ振り返って「おはよう」と返す。
めちゃくちゃ仲の良い子というわけではない、ただのクラスメイト。
……ただ見る度に、透明感のある美少女だなと感動する。
つまり、ちょっと遠くから眺めて「眼福だな」と思うくらいの距離感の子。
今日、このときまでは。
本当に、その程度の認識だったのだ。
「その小説、好きなの……!?」
「はへ」
彼女の声が、突然弾んだ。彼女の視線の先には、私のスマホ。
画面には、まさしく今から読もうとしていた小説が。
「私も、好き、なの……!」
透明感溢れる美少女に告白された。
……や、私じゃなくて、私の推し小説が、だけど。
でも、少しドキッとした。
朝の白い光がよく似合う、色素の薄い長い髪。キラキラと輝く大きな瞳。薔薇色の頬。
綺麗なものに見つめられれば、そりゃドキッとする。
「桜井も、ネット小説とか読むんだね」
辛うじて、それだけ言葉に出来た。
「う、うん! お小遣いが限られてるから、ネットでよく読んでるんだ」
彼女は、興奮のあまりどもっている。
普段おしゃべりな印象は無く、大きな声を出している印象も無い彼女だから、そのどもりは、不思議と納得感があった。
興奮に口がついていっていない感じ、というか。
「わかる。図書館も使うけど、借りて気に入った本、あとで買っちゃうからな~」
「わ、わかる! 私も、それ、しちゃう」
「ネットのも、書籍化したら結局買っちゃったりして」
「そう、なの。だから、どんどん、買う本増えちゃって……!」
彼女が拳を握りながら、何度もうなずいた。
これは、本当の本好きだ。
教室の外から、クラスメイトの笑い声が近付いて来る。
「あ、あ……あの、また、お話していい?」
彼女が恥ずかしそうに、伏し目がちに言った。
「この小説の感想、誰かと、お話したくて……!」
思えば、肝心要の小説の感想は言い合えなかった。
「……うん。私も。桜井と話したい」
「じゃ、また、ね」
彼女が嬉しそうに小さく言った。
私の胸がキュンとしたのは、ファン仲間を獲得したからだと、そう己に言い聞かせた。
朝の、静かな教室が好きだ。
こんな奇跡を起こしてくれることもある。
朝の白い光が、好きだ。
END.




