付き合い切れんわ(百合…? 第三者視点)
小腹が空いた。そろそろ夜十二時になろうとする頃。
キッチンに何かないかと私が一階に降りたのと、玄関が開いて姉が帰って来たのは同時だった。
「ただいまー」
「おかえり。遅かったね」
「キューと飲んでたからね」
姉は、ブーツを脱ぎながら肩を竦めた。
「キューさんとも長いよねぇ」
「まあねー」
私はキッチンの方へ、姉は手洗いうがいのために洗面所の方へ。
冷蔵庫からプリンを取り出したところで、姉がキッチンに入って来た。
多分、冷たいお茶が飲みたいのだろう。
私が気を利かせて、麦茶のポットを取り出して渡すと、姉は満足げに「ありがと」と笑った。
ご機嫌に鼻歌を歌い、グラスを取り出す姉を見ながら。
「お姉にしては長持ちしてる関係だよね」
私は言った。
「失礼な」
「だって、そうでしょ」
スプーンを取って、ダイニングテーブルの方へ。
「お姉、独占欲めっちゃ強いじゃん」
椅子にどっかり座ると、思い切りプリンの蓋を剥がした。
「囲い込んで、自分以外のとこ行かせないようにして。それで、小学校時代めっちゃ失敗してたじゃん」
「……嫌なこと覚えてるね」
「そりゃね」
何せ、第一の被害者は、幼稚園の頃の私だ。
私が思いのほか反抗するから、姉は諦めて同級生に目を向けたのだ。
胸の奥から苦い味がせり上がって来る気がして、慌ててプリンを口にした。
甘い。
蕩ける甘さは、優しくて柔らかい。
我知らず、安堵の息を吐く。
「私だって、ちゃーんと成長してるって」
姉は、グッと麦茶を飲み干した。
「そんなわかりやすく囲い込んだり、独り占めしたりなんてしなくなったよ」
「そういうこっちゃないと思うけど」
ぱくぱくとプリンを口に放り込む。
この優しい味が無ければ聞いてられない話題だな、と思った。
自分で振っといてアレだけども。
「ちゃんと共通の友人だって、一人二人、居るっての」
姉が言い放った数がリアルで、私は口元を引き攣らせた。あと共通のというところも怖い。
「ホント、お姉って怖いわ」
「アンタはホント失礼」
姉が、グラスをシンクに置く音がした。
「案外と、私のこの怖さがあの子にとっちゃいいのかも知れないよ」
「あっそ」
付き合い切れんわ、と私はため息を吐いた。
プリンの最後のひと口が、いやに甘く感じた。
END.
前回の二人を別視点から見たお話でした。




