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微睡みの春、寝起きの幸福(同棲百合と姪っ子、三人家族)
昔は、空を飛びたかった。
空を飛べば、倖せになれるかな。安心出来るかな。
そんなことを、漠然と考えていた。
「…………んぁ」
ふっと目が覚めた。見慣れているけど、自室じゃない天井。居間だ。
頬を擽る風に目を細める。
藺草の匂いに混じって、庭の緑の香りがした。
すっかり春だ。
お昼寝にぴったりだね。
身体を起こすにはまだ怠く、何となく隣を見て。
「ふはっ」
思わず笑いが零れた。
我が愛しの恋人・櫻子と、彼女の姪・小牧ちゃんが、並んで眠っていた。
小牧ちゃんは、ふにゃふにゃと良い笑顔のまま寝ているし(小学生の寝顔として百点満点の良い顔だ)、櫻子にいたっては、よだれまで垂らしていて。
何たる平和。
何たる愛しさ。
「……いいなあ」
良い光景。
倖せな、光景だ。
ずっと目に焼き付けておきたい。
……なあ、過去の私。そこから飛ばなくても、倖せになれるよ。安心も出来るよ。
本当に。
「良かったね」
私。
寝返りを打ち、二人をじっくりと眺める。
彼女たちが起きるまで、のんびりこの倖せを味わうのだ。
END.




