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どこにも行かないで、は言わないよ(百合。真面目×自由人)
「抱き締めてもいいですか?」
「どうしたの、馨くん」
もちろん、いいんだけど。
リビングで動画を見ていたとき。いきなりそう言われた。
私が了承するや否や、引き寄せられ強く抱き締められた。
温かい。同じ石鹸の匂い。心地好い腕の中。画面では、パン窯からパンが出てきた。美味しそう。……って、なんだこの状況。ちょっと面白い。
「……何だか、抱き締めたくなりまして」
馨くんが言う。
「何処か行くときは、ちゃんと言って下さいね」
「いつも言ってるだろ~?」
「そうですね」
彼女の腕の力が緩んだ。馨くんが少し離れる。顔を覗き込んでみた。
「ありがとうございます、ミイさん」
眉を八の字にして笑う顔は、可愛くて、綺麗で……何処か寂しげにも見えて。
今度は、私の方から抱き締めた。
END.




