勝負の行く末を楽しみに(百合。片想い…? 女子高生)
どの道筋も負けに繋がる盤上。
私は観念して頭を下げた。
「……負けだ」
宮内が、笑顔になる。にこっという効果音が聞こえてきそうなくらい、完璧な笑顔だ。
「やっぱり宮内は強いな」
「そりゃあね」
二人で、駒を片付ける。駒と言っても本物ではなく、マグネット式のものだ。将棋盤も、携帯用の小さなもの。教室の片隅でやるのにちょうど良い。
「小学生の頃から、じいちゃんばあちゃん相手にやってるんだ」
二人の強さはえぐいんだから、と楽しそうに彼女は言う。盤上へ視線を落としているためか、長い睫毛がはっきり見えた。
駒を集める指の、すらりとした細さをじっと見つめる。
「でも、三宅も強いよ。半年前に始めたとはとても思えない」
「猛練習の成果だ」
「へえ、そんなにまでして私に勝ちたいんだ?」
片眉を上げ、彼女が問うた。形の良い眉は、思いのほかよく動く。お人形めいた顔をしているからこそ、その豊かさのギャップがより映える。
「勝ちたいとも」
「負けず嫌いだねぇ。まあ私もだけどさ」
「理由は、わかってるくせに」
私の言葉に、
「わかってるよ」
と宮内は口角を上げた。相変わらず、美しい笑顔だ。
私が彼女に勝てば。彼女は、私の恋人になるという。
「だからこそ、手は抜かない」
彼女が、ぱちんと将棋盤を閉じた。
「私は、本当に強い人間と付き合いたいからね」
「精々、精進するよ」
「うん。待ってる」
早く私に勝ってよ? と微笑む彼女の唇を。
奪ってしまいたくて、仕方なかった。
END.




