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これはお別れではないから(百合。執着系後輩×おおらか先輩。先輩の卒業)
卒業式のあと。
ひーくんにメッセージで呼び出された。
呼び出された先は、寮の部屋。彼女の自室だ。
別れの挨拶(と言いつつ、どうせみんなちょくちょく遊びに来るのだろうけど)と雑談で盛り上がる部室から、こっそり抜け出す。
彼女の部屋を尋ねれば、ノックするより先に「開いてる」と言われた。……足音か? 相変わらず気配に敏い子だ。
ドアを開ける。目の前に、ひーくんが居た。
「千ちゃん」
彼女の腕が伸ばされ、私を引き寄せる。
抱き締めて来た腕は、微かに震えていた。
「来年、絶対追い掛けるから」
「……うん」
離してやるものか、と言わんばかりの力で抱き締めて来るくせに。
寂しいとは素直に言えない。
そんな彼女が、愛おしい。
「待ってる」
「絶対、浮気するなよ」
「……しないよ。マジボイスやめて」
まあちょっと、怖い気もするけど。
それでも。
「楽しみに待ってるからね」
やっぱり、愛しいのだ。
END.
『出逢って六度目の春』(https://ncode.syosetu.com/n9047lt/18/)の過去。先輩の卒業式の日。




