悪女でも何でもない(百合。片想い)
文化祭が終わり、いよいよ秋から冬にうつろいゆく今日この頃。
私は、ひょっこり文芸サークルのたまり場に顔を出した。
そこには友人だけが一人、煙草を咥えて(火は付けていない)、ぼぉっと窓の外を眺めている。
「よお、悪女」
「……なあに、藪から棒に」
私が声をかけると、彼女は気怠げにこちらを振り向いた。
絶賛伸ばし中の髪が、さらりと靡く。
「人の友だちを誑かしてくれちゃって」
「あら、人聞きの悪い」
私が言えば、彼女が片眉を上げた。
手近にあったパイプ椅子を引き摺りつつ、
「可哀想に。あの子ったら、大混乱状態なわけよ」
私は言った。
あの子は、文化祭のあの日まで、とあるイラストの女にぞっこんだった。
ガチ恋勢っていうのは、あの子みたいなのを言うのだろう。
それが今や、その『女』に扮したこいつと板挟みになって、「どれが本物の恋か、愛か」と日夜頭を悩ませている。
「ふぅん……そっか」
彼女は、煙草を口から外すと今度は指先で弄びながら思案気に俯いた。
「ねえ」
「なに」
パイプ椅子に腰かけ、改めて彼女を見た。
そして、目を見開く。
「……脈、あると思う?」
私にそう問う彼女の耳は、真っ赤だった。
あらあら。
まあまあ。
「さあ? ご自分で確かめて、どうぞ」
ケチ、とむくれる彼女が可愛くて可笑しくて、私はつい、笑ってしまった。
END.
こちら『私の恋は、どっちだ』(https://ncode.syosetu.com/n9047lt/24/)の二人の共通の友人。




