悪戯をしていい日、ではない(百合。真面目×自由人。馨×ミイ)
ハロウィンが終わり、十一月に入った。
部屋の至る所に飾っていたハロウィン飾り……おばけかぼちゃの置き物とか。コウモリと猫のモビールとか……を、馨くんと二人で片していく。
「今年のハロウィンはドッキリだったねぇ」
言いながら、私は丁寧にかぼちゃの置き物を箱へ入れた。
「それ、言うのは私の方だと思うんですが……。まさか帰ったら、ミイさんがマンボウの着ぐるみを着て倒れてるとは。本当に驚いたんですからね」
モビールを外しながら「肝が冷えました」と馨くんが言う。
そのあまりの真剣さに「ごめん」と改めて謝った。
「職場で教えてもらった歌が面白くて、やってみたくなったんだよね」
「トリックオアトリートの言葉無しでの悪戯はやめましょう。心臓が持ちません」
……本当は、血糊やおもちゃのナイフも使って、リアル路線にしようとしていたのだけど。それは秘密にしておこう。
泣きそうな声で私に縋り付く馨くんを思い出し、猛省する。
「でも馨くん、トリックオアトリートって言うと、絶対お菓子出してくるじゃん」
「それはもちろん。ミイさんも用意してるじゃないですか」
「そらそう」
悪戯はしたいが、されるのはちょっと。
「うーん。なかなか悪戯出来ないねぇ」
「悪戯して良い日ってわけでもないですからね?」
馨くんが、モビールの入った箱を閉めながら突っ込んだ。
「まあ、今回みたいなのでなければ、悪戯もやぶさかではありません」
「馨くんって寛大だよね……悪戯しといて言う科白じゃないかもだけど」
その箱を受け取り、透明なお片付けボックスにしまう。
「ミイさんが楽しければ、それが一番なので」
馨くんが、にっこりと綺麗な笑顔で言った。
本気の目だ。
私は、うん、と心の中で頷く。
「……。二人とも楽しい方がいっか」
こんなに私の楽しみを優先してくれる人を、怖がらせるような真似は本当にいけない。
猛省に猛省を重ねた。
「ミイさん?」
「ううん。何でも無い」
とりあえず、心臓に悪そうな悪戯は今後しない。
後で「面白かったね」と二人で言える悪戯について、もっと考えよう。
そう決めて、お片付けボックスの蓋を閉めた。
「クリスマス飾り、何か新しいの付け足しますか?」
そんな誓いは露知らず、彼女は楽しそうに次の行事について話を向けた。
END.




