美味しそうな顔をしていればそれでいい(百合。幼馴染同士。サボり魔×元風紀委員。朱良×千廣)
こちら(https://ncode.syosetu.com/n9047lt/228/)のお二人。お付き合いしてます。
休日のショッピングモール。
シュークリーム屋を出ると早速、千廣は目的のそれ……期間限定チョコレートシュー……にかぶりついた。
「ん……っ!」
そして何とも嬉しそうに目元を綻ばせる。心なしか頬まで朱い。喜びいっぱいの顔とは、このことだ、などと思う。
「………」
私も期間限定のシューを食べつつ(こちらは栗味。ほのかな甘みが美味しい)、その様子をじっくり眺めていた。
(可愛い……)
色素の薄い千廣は、テンションが上がるとすぐ頬が染まる。そこが良い。
しかしそれにしても、今はわかりやすくご機嫌だ。
普段の神経質そうな表情は微塵も無い。
(コイツ昔から、甘いものには目が無いからな……)
私の脳裏に浮かぶあいつの笑顔の大半は、甘いものとセットになっている。
例えば幼稚園のとき、ソフトクリームにかぶりつき、口元をクリームまみれにしながら笑っていた顔とか。
小学校の修学旅行で、もみじ饅頭を何個も食べて倖せそうにしていたときの顔とか。
ケーキバイキングでたくさんのケーキを前に目を輝かせたときの顔とか。
……風紀委員なんぞをしているときの真面目くさった顔より、はるかに印象に残っている浮かれ顔ばかりだ。
「はー……今回のも美味しい……倖せだ……」
そう言って微笑んでいる彼女の空気は、いつもと違って緩み切っていた。
(相変わらず、甘いものを食べてるときは緊張感のない顔しやがる)
私も思わず、ふっと笑ってしまう。
「こっちのも食べるか?」
「! 食べる!」
私の差し出したシュークリームを、千廣は遠慮なくぱくりと食べた。
そして、また嬉しそうに目を細める。
ずっとそういう緩んだ顔を……倖せそうな顔をしていればいい。
「そっちのも、ひと口くれ」
「ん。ひと口な」
「ケチくせぇ奴」
「何だと」
……そんなこと、絶対本人には言ってやらないけれど。
さて、彼女の頬に付いたクリームをどう取ろうか画策する。
END.




