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百花繚乱~一日一作短編集~  作者: 飛鳥井 作太


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その朝を待ちわびる(歳の差百合。年上×年下。どちらも成人済)

 お風呂上がり。

 リビングに戻ると、恋人が、そわそわした様子でテレビをつけたり、スマホに視線を移したりしていた。

 ──何を見ているのだろう?

 悪いと思いつつ、こっそり後ろから覗いてみた。

 すると、芽瑠《める》ちゃんは、天気予報サイトを確認していた。それも、何個も。

 そういえば、さっきのテレビも天気予報だったと気が付く。

「……そんなに明日の天気が気になる?」

「わあっ」

 私が声をかけると、彼女は肩をびくりと震わせ、声を上げた。

「び、吃驚しました……」

 胸のあたりを押さえながら、芽瑠ちゃんがこちらへ振り返る。

「ごめんごめん。あまりにそわそわしてるから、気になっちゃって」

 いいえ、と彼女が笑って首を振った。

「にしても、どうしたの? 明日、何かあるの?」

 芽瑠ちゃんの横に座り、聞いてみる。

「明日、というわけではなくて」

 すると、彼女はちょっと言い淀んで、目を伏せた。

「……早く気温が下がらないかなって思って見てました」

「気温?」

「はい」

 ちらっと見た部屋の温湿度計は、二十三度を示している。

「早く、桐子さんとお揃いのストールが使いたくて」

 芽瑠ちゃんは、恥ずかしそうにスマホで口元を隠して言った。

「!」

 それは、昨日のことだ。

 仕事帰りに待ち合わせて行った、百貨店の催事場で。

 私たちは、あるストール屋さんに一目惚れしたのだ。

 その店に並べられていたのは、鮮やかな色合いをしたものばかりだった。

 色とりどりの布たちは、すべて軽やかでありながら、温かで柔らかな手触りをしていた。

『これ、色違いなんですね』

 その中で彼女が手に取ったのは、落ち着いた深い赤のものと、淑やかな薄い紫のもの。

 その二つには、端に繊細な蝶の刺繍が施されていた。

『へえ、可愛い。お揃いで買っちゃう?』

『! はい!!』

 そうしてほぼ即決で、私たちはそれらを買った。自分で言っておきながらあれだが、『お揃い』の甘い響きが、背中を押した気がする。

「すみません、子どもっぽくて」

 芽瑠ちゃんが、目の端を朱くして言う。

「どうして謝るの」

 その様子に胸がきゅんと甘く疼き、私は笑いながら手を伸ばして、彼女を引き寄せた。

「私だって、楽しみにしてるんだから」

「……はい」

 私が言うと、芽瑠ちゃんは嬉しそうに頷いて、こちらへもたれかかってくれた。

「あのストールを羽織って、朝のお散歩とかしたいね」

「いいですね。パン屋さんのモーニングとか行きたいです」

「いいねぇ。絶対行こう」

 はい、と笑顔で返事をする彼女に「約束ね」と言って、キスをする。

 柔らかな唇が愛おしく、何度もキスを重ねる私に、彼女は擽ったそうに、けれど倖せそうに笑みを零した。


 END.


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