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百花繚乱~一日一作短編集~  作者: 飛鳥井 作太


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甘えと独占欲が心地好い(同棲百合。充希×清風)

 夜。リビングで。

 先にお風呂を済ませ、ソファーで動画を見ていたら。

「……膝枕をしてもらえないだろうか」

 お風呂から上がった充希《みつき》に、そうお願いされた。

 見上げれば、疲れを滲ませた彼女が、こちらを懇願するような眼差しで見下ろしている。

「もちろん、いいですよ」

 ぽんぽん、と自らの膝を叩いて、充希をお誘いする。

 普段はどんなに疲れていても、お風呂に入ればたいてい回復する彼女だけれど、こうして時折、お風呂でも癒えない疲れを引きずるときがある。

「じゃあ、お言葉に甘えて」

 充希が、私の膝に頭を乗せた。そしてそのまま、私のお腹に顔を押し当て、腰に腕を回して抱き着いて来る。

「おやおや。今夜は甘えたさんですね」

「……嫌ならやめる」

「嫌なわけが無いの、知ってるでしょう?」

「……うん」

 ぎゅ、と腰に回された腕の力が強くなった。

「少し、疲れた」

 ため息と共に、呟きが漏れる。

「近頃、ずっと忙しくしてましたものねぇ。えらいです」

 私は、彼女の頭を撫でながら言った。優しく、そっと。硝子細工に触れるみたいに柔らかく。

「こうして清風《きよか》が甘えさせてくれるから、まだがんばれる」

「ふふふふ、本当にえらいですよ」

「だから」

 私のお腹にぐりぐりと顔を押し付けながら、充希が言う。

「私以外に、こういうことはしないで欲しい……」

 私は目を丸くした後、思わず「ふふっ」と笑いを零した。

「私の膝も撫でる手も、全部全部、あなたのものですよ」

 我ながら、蕩けるように甘い声が出た。

「そもそも、あなた以外に私にこれを求めるような人間、居ませんけどね」

「清風は、自分のことをよくわかってないから」

「何ですか、それ」

 疲れすぎて、ちょっと頭が可笑しくなったらしい。

 そういう充希も、好きだけれど。

 ……それにしても、普段は私の自由にしたらいいと言うあなたが、こうして独占欲を出してくれる。

 そのことが、これほどまでに、たまらなく嬉しいなんて。

「……言えませんね、流石に」

 小さく苦笑した。

「清風?」

「いえ。……ゆっくり休んで下さい、と」

「うん」

 目を瞑った充希の頭を、私は彼女が満足いくまで撫で続けた。

 ほんのりと幸福感に包まれながら。


 END.


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