これなら明日も(歳の差百合。年上×年下。どちらも成人済)
リビングにて。
私はソファーにもたれてぐったりしていた。今日の仕事は、量・内容共にいつもの倍は疲れた。
その所為で、お風呂も晩御飯も終え、あとはただのんびりするだけだというのに、今はもう何もする気が起きない。
読書はおろか、動画を観るのすら億劫なレベルだ。
(これが週の始まりかと思うと、泣きたくなるわね……)
まだ四日もある……と、絶望のため息を吐きかけたとき。
「桐子さん! 今日のミルクティー、とってもあのお店っぽく出来ました!」
キッチンでお茶を入れてくれていた芽瑠ちゃんが、興奮した面持ちでこちらへ来た。
頬をほんのり染め、手にはお揃いのカップを持って。
その可愛さに、乾いた心が潤うのを感じる。
「どれどれ……」
そして『あのお店』の味を再現出来たらしいミルクティーにも、むくむくと興味が湧いた。差し出されたカップを受け取り、早速一口飲む。
途端、口内に広がる茶葉の深みと濃さ。牛乳の柔らかな口当たり、砂糖のしっかりした甘さを感じて、目を見開いた。
「! 確かに! この茶葉の濃さ、完璧だわ」
私たちお気に入りのお店の味がした。疲れが吹っ飛ぶ。
「ついに出来ました!」
彼女がガッツポーズを取り、私の隣に座った。嬉しそうな笑顔が愛らしい。
「流石よ、芽瑠ちゃん。今日は、あのとっときのクッキーあけちゃおっか!」
「いいんですか?」
「こんな美味しいお茶には、特別なお茶請けでしょ」
「嬉しいです」
じゃあ取って来ますね、と弾んた声で言うと、芽瑠ちゃんは、またサッと立ち上がった。
うきうきとした足取りでキッチンへ向かう彼女の後ろ姿を見て、私は、自分も同じように心が弾んでいることに気が付く。
(本当に、私の恋人は凄いわ)
さっきまで、もう何も考えられないくらい、ぐったりしていたのに。
疲れを吹き飛ばすだけでなく、こんなにわくわくした気持ちにもしてくれるなんて。
「取ってきました」
綺麗な缶を持って、再び隣に座った彼女の頬に。
「ありがとね、芽瑠ちゃん」
私は、感謝のキスを贈った。
「……どういたしまして」
その頬が、先ほどとは違う意味で朱に染まる。
そんな芽瑠ちゃんの可愛さに目を細めながら。
(明日も、頑張れそうだ)
私は、ふふふと満足げに微笑んだ。
END.




