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百花繚乱~一日一作短編集~  作者: 飛鳥井 作太


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キスもハグも初めから付いてるよ(同棲百合)

 朝。キッチンで。

 薬缶に水を入れていたら、背中に温もりがぶつかって来た。

「月曜やだよ〜。助けて麻里花ぁ~」

 葉奈《はな》が情けない声で言う。私の頬に自分の頬をくっつけて。その感触を楽しみながら、私は薬缶を火にかけた。

「はいはい、私もやだよ、お揃いだね〜」

 背中に彼女をくっつけたまま、ドリップコーヒーを手に取る。

 月曜日、いつものやり取り。

 たいてい葉奈は、私にしばらく抱き着いてうだうだ言ったあとはサッと切り替え、朝食の用意をしてくれるのだけど。

「ねぇ、何かご褒美ちょーだい。私もあげるからさぁ」

 今日は、憂鬱さを乗り越えるための『お砂糖』がもう少し必要らしい。

「そうねぇ。じゃあ今日帰りに、例のおじさんのチーズケーキを買ってきてあげる」

 ドリップコーヒーをセットしつつ言った。

「マジで!? いいの!?」

 葉奈の声が、一気に弾む。それが可笑しくて可愛くて、ふふふっと笑った。

「今日用事で店の近く寄るからいいよ」

 もともと買うつもりだったことは、ここでは秘密。サプライズにするか、ご褒美にするかの些細な差だ。

「やった! じゃあ今日お風呂上がりにマッサージするね!」

 おや。そのご褒美は、とても。

「嬉しいねぇ」

「へへへ、ならキスも付けて」

「いいよ。そっちもハグ付けて」

「もちろんでーす」

 お湯が沸く。しゅんしゅんと薬缶が鳴いた。

 鼻歌交じりに、葉奈が背中から離れる。パンを焼いてくれるのだろう。ありがたいのに、ちょっと背中が寂しくなる。

 ああでも。

 お互いにご褒美があるから、今日一日楽しみだ。

 ふと彼女と目が合い、二人で笑う。

 月曜日が、幸先よくスタートした。


 END.


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