冬の足音がする(社会人百合)
「わー。落ち葉すごいね」
「そうねぇ」
近所の公園。
平日の朝は、ほとんど人が居ない。
かさかさと、落ち葉が足元で鳴った。
今日は二人でほんのちょっと早起きをして、少し早めに家を出て、ここに来ている。
「もうすぐ冬だねぇ。今日はあったかいけど」
一緒に暮らしている彼女が、両腕を広げながらのんびりと言った。
落ち葉の甘い匂いが、ふわりと風に乗って薫る。
「……しかし、珍しいね」
「何が?」
「寒くなって来たら、布団からなかなか出ようとしないじゃん」
ギリギリまで寝て、外出も最低限みたいな?
私が言うと、彼女は苦笑した。
「まあねー。今も、ちょっと眠いし、寒い」
「じゃあ、どういう心境の変化で?」
私の問いに、
「このあいだ、ここを通りがかったときにね。女のひと二人が、すっごく楽しそうに散歩してたのよ」
彼女が擽ったそうに笑って答えた。
「それ見てたら、何か、いいなー! って思って」
きゅ、と手を握り締められた。
冷たい手。細くて小さくて、可愛い手。
大好きな手。
「マキちゃんと一緒に散歩したいなー! ってなったの」
ほら、最近マキちゃん、残業で帰りが遅いじゃない?
彼女が、小首を傾げる。
「だから、ちょっと早起きしてお散歩デート、なんて」
きゅ、きゅ、と手が何度も握られた。
寂しい、なんて彼女は言わなかった。
それでも、伝わって来るものがある。
「……くっ」
「あ、ごめん、嫌だった?」
「違う、逆」
私は言った。
「可愛すぎて、唸ってしまった」
「あはは、何それ」
彼女の手を引いて、ぎゅっと強く抱き締める。
「あんなクソ会社さっさと転職するから、結婚しような」
「話飛び過ぎ」
彼女が、可笑しそうに声を上げて笑った。
「でも、ありがとうね」
背中に腕が回される。
もう一度強く、ぎゅっと抱き締めた。
「ハグしてるとあったかいなー」
「ね」
冬の足音を聞きながら、私は彼女の温もりをもう少し享受しようと瞳を閉じた。
END.




