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百花繚乱~一日一作短編集~  作者: 飛鳥井 作太


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夕暮れ涙(百合。片想いの子とその友だち)

 教室に入ると、そいつは自分の机に突っ伏していた。

「かな子先輩の見送り、行かなくていーの」

「……」

「部のみんな、行くみたいだけど」

「行かない」

 ぐずっ、と鼻を啜る音。

「何で」

 今行かないと、もう二度と会えないかもよ。

 ちょっと意地悪だけど、そう言った。真実でも、あるし。

 この子に、後悔だけはして欲しくなかった。

「だって」

「うん」

「わたし、ぜったい、言っちゃう」

 ずびびっ

 大きく鼻を啜って、

「行かないでって、言っちゃう……っ」

 彼女は言った。

「だからっ、行かない……っ」

「……そう」

 大好きな人には、輝かしい門出を。

 自分の儚い願いは、置いといて。

 それが、この子の愛の、精一杯の矜持なのだろう。

「がんばったね」

 私は、黙って頭を撫でてやる。

 しばらく、教室には小さな泣き声が響いていた。

 夕焼けは、真っ赤で恐ろしい程、美しかった。


 END.

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