私だけでも、今だけでも(歳の差百合。年上×年下。どちらも成人済。同棲中)
リビングで。私はソファーの前に座り、それを背もたれ代わりにしながら、芽瑠ちゃんを呼んだ。不思議そうな顔のままこちらへ来た彼女を引き寄せ、そのままその頭を自分の膝に乗せる。
驚く彼女に「ちょっと休みな」と言い、頭を撫でた。「でも」とか「今夜中に資料を」とか言う言葉も無視して、ただ頭を撫で続ける。
そのうち、芽瑠ちゃんの声が鼻声になっていき。
「……っ」
私の腰に腕を回し、お腹に顔を埋めるようにして抱き着いて来た。
私は変わらず、彼女の頭に優しく触れる。
「……、……」
ぐす、と鼻を鳴らす音がする。それでいい、と密かに笑う。
「いい子、いい子。芽瑠ちゃんは、いい子だよ」
歌うように、あやすように言う。
「いつもがんばってるからねぇ、今日くらいは泣いたって、投げ出したって、いいんだよ」
張り詰めた彼女の糸が、ぷつんと切れてしまう前に。ため込んだ澱が、溢れ出してしまう前に。
こちらから、緩めて、解き放てるようにする。
……仕事より何より、私にとっては彼女の心が一番大事。
頑張り屋の彼女だから。たまにはこうして、無理やりにでも休ませたい。
どうせあと一時間もしたら、自分から立ち上がって「がんばります」と言う人なのだ。
それなら私だけは、今この時間だけは、ただただ甘やかしていたかった。
END.




