意外と噛み合っているかもね(百合。真面目×自由人。高校時代付き合いたて。第三者視点)
放課後の教室。
何となく友人たちとだらだら喋って過ごしていた。
目の前の友人二人は、最近付き合い始めた。
こんな身近でくっつくことってあるんだなぁとしみじみ感心しつつ、ふと気になったことを聞いてみた。
「意外と、手編みのセーターとか贈ってないんだ」
二人に、というよりは片割れの馨の方に、そう問うた。
馨はきょとんとし、ミイは大きなパンを頬張っていた。ミイの方は、先程から話を聞いているんだかいないんだか、わからないくらいパンに夢中だ。
そんなにお腹空いてたんか。昼休み、何か引くくらいでかいおにぎりと唐揚げを食べていた記憶があるんだけども。ちっちゃい身体なのに、本当によく食べる奴だ。
「私に一体どういうイメージを持ってるんですか」
馨が、呆れたような口調で言った。
だからとても素直に応える。
「付き合って早々、重めの手作り送って引かれてそう」
特にミイみたいな自由人タイプに。
「……」
馨は、きっと漫画だったらキレマークが付いているだろうと思うくらい、わかりやすく不服そうな顔をした。
「手編みのセーターは流石に贈りません」
「そうなんだ」
「マフラーくらいです」
「マフラーも重めの方よ」
お前の中で、その差は一体何なんだ。
「ただ私……編み物が苦手でして」
彼女が、眉を寄せ苦しげに言った。無念、と顔だけで語っている。
「技術不足で諦めたんだ」
そんなことあるんだな、と思いながら、ようやっとパンを食べ終えたミイに話を振ってみる。
「ミイ、手編みのプレゼントは無いみたいよ」
「そうねぇ……」
手についたパン屑を舐めながら、ミイが小首を傾げた。一応、話は聞いていたらしい。
「手作りより、お揃いのマフラーのが付き合ってる感出て良くない?」
「ミイさん……!」
「そっちかよ」
愛の重さとかでなく。
「今度、一緒に選びに行きましょう」
馨が、うっきうきの口調でそう誘う。
「ん、いいよ。ちょうど新しいの欲しかったし」
何か目の前でデートが決まった。
いや、待て。
「ちょい待ち。馨、アンタのマフラー、すげぇいいブランドのじゃなかった?」
祖父母に貰ったとかいう。
「物の価値は、人それぞれですよ。恋人とのお揃いに勝る価値があるとでも?」
「いいもんを孫に贈りたいって思ったじっちゃんばっちゃんの気持ちに謝れ」
恋の浮かれポンチがよぉ、と思わずツッコんでしまった。
常日頃、誰よりルールと常識を重んじるのにどうしたことだ。これが恋か。怖すぎるだろ。
「おじいちゃんおばあちゃんの気持ちは大事だからね。お揃いはマフラーじゃなくて、手袋にしよう」
「ミイさん……!」
ミイが、浮かれポンチに引くことなく、かつ乗せられることもなく、程良い折衷案を出した。
これには部外者の私もひと安心だ。
……意外とこういうとき、ミイは常識あるというか、情のある対応をするのだ。
普段ははっちゃけているけれども。
例えば、お腹が空いたからと、授業中にこっそりおかきを食べたり(何故かバレない。匂いが充満してるのに)。
遠足中、ふらっと気になる方へ行ってしまったり(いない、何処だ!? 探すか!? 先生に言うか!? という絶妙なタイミングで戻って来る)。
調理実習のとき、何故か関係ない簡単一品料理を作ったり(じゃこの梅豆腐和えは美味しかった)。
いやマジで好きに生き過ぎてるな、こいつ。
こいつはこいつで、恋人と付き合うということが出来るのか不安だけれど。
……まあ。
「意外と噛み合ってるのかもね」
二人のやりとりを見て、何となくそう思った。
「もちろんですよ!」
「そうねー」
自信満々の応えと、緩い応えの二つを聞きながら。
末永く続いて欲しいものだと、私はため息を吐いた。
END.




