いつもの夕暮れ、少し違う夜が来る(両片想い。幼馴染男女)
こちら『時よ止まれ、君は美しい』(https://ncode.syosetu.com/n9047lt/213/)の続き。
居間にて。
遊びに来た史兄ちゃんと一緒に、夕方のワイドショーを何となく見ていた。
昔から変わらない夕暮れの時間。
両親は仕事で、兄はバイト。
私たちの面倒を見てくれていた祖母も、今は仲の良い友だち三人と同じ施設でのんびり暮らしている。
本当に、二人だけの夕方。西日が入って、部屋はオレンジ。テレビでは、『理想のプロポーズ』について街頭アンケートを行っていた。
たぶん、ついこのあいだ俳優さん同士が結婚したからだと思う。
「昔、『史兄ちゃんと結婚する!』なんて言ってくれとったのになあ」
頬杖をつきながら、史兄ちゃんがぼんやりとそう言った。
「!? 嘘!?」
私は吃驚して、口から心臓が飛び出しそうになる。
や、実際は飛び出さへんけども。
「嘘やで」
「嘘かい」
あまりにもあっさり覆される前言。
「けど、そんな思い出があったらええなあって思ててん」
「……」
史兄ちゃんが、ふっと優しく苦笑した。
「そしたら、お前が誰ぞに告白されたとしても『俺ら約束あるやろ?』って言えるやんか?」
冗談めかしているのに、目の奥は笑っていない。
そのことに、私はもう気が付いている。
「……結婚は」
「うん」
「色々すっ飛ばしすぎとちゃいますのん」
私も、冗談めかして敬語で言った。
「ダメかなぁ?」
「まだ、『好きです、お付き合いして下さい』って言われてへんからダメですわ」
こちらに伸ばされた手が、ぎゅっと私の手を握る。
顔を上げて、彼を見た。彼もまた、私を見ていた。
「好きです、お付き合いして下さい」
思った以上に真剣な眼差しで、バクンと一つ、心臓が先にYesを奏でる。
「……まんまやん」
「じゃあ、大好きに格上げしとこか?」
彼の顔が、優しく甘く綻んだ。
「……史兄ちゃんのあほ」
「何とでも」
そっと引っ張られ、彼の腕の中へ。
ちっちゃな頃ぶりの抱擁。
けれど、あの頃よりもずっと力強い抱擁に。
私は嬉しいやら照れくさいやらで、唸りつつ、抱き締め返した。
END.




