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百花繚乱~一日一作短編集~  作者: 飛鳥井 作太


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219/243

いつもの夕暮れ、少し違う夜が来る(両片想い。幼馴染男女)

こちら『時よ止まれ、君は美しい』(https://ncode.syosetu.com/n9047lt/213/)の続き。

 居間にて。

 遊びに来た史兄《ふみにい》ちゃんと一緒に、夕方のワイドショーを何となく見ていた。

 昔から変わらない夕暮れの時間。

 両親は仕事で、兄はバイト。

 私たちの面倒を見てくれていた祖母も、今は仲の良い友だち三人と同じ施設でのんびり暮らしている。

 本当に、二人だけの夕方。西日が入って、部屋はオレンジ。テレビでは、『理想のプロポーズ』について街頭アンケートを行っていた。

 たぶん、ついこのあいだ俳優さん同士が結婚したからだと思う。

「昔、『史兄ちゃんと結婚する!』なんて言ってくれとったのになあ」

 頬杖をつきながら、史兄ちゃんがぼんやりとそう言った。

「!? 嘘!?」

 私は吃驚して、口から心臓が飛び出しそうになる。

 や、実際は飛び出さへんけども。

「嘘やで」

「嘘かい」

 あまりにもあっさり覆される前言。

「けど、そんな思い出があったらええなあって思《おも》ててん」

「……」

 史兄ちゃんが、ふっと優しく苦笑した。

「そしたら、お前が誰ぞに告白されたとしても『俺ら約束あるやろ?』って言えるやんか?」

 冗談めかしているのに、目の奥は笑っていない。

 そのことに、私はもう気が付いている。

「……結婚は」

「うん」

「色々すっ飛ばしすぎとちゃいますのん」

 私も、冗談めかして敬語で言った。

「ダメかなぁ?」

「まだ、『好きです、お付き合いして下さい』って言われてへんからダメですわ」

 こちらに伸ばされた手が、ぎゅっと私の手を握る。

 顔を上げて、彼を見た。彼もまた、私を見ていた。

「好きです、お付き合いして下さい」

 思った以上に真剣な眼差しで、バクンと一つ、心臓が先にYesを奏でる。

「……まんまやん」

「じゃあ、大好きに格上げしとこか?」

 彼の顔が、優しく甘く綻んだ。

「……史兄ちゃんのあほ」

「何とでも」

 そっと引っ張られ、彼の腕の中へ。

 ちっちゃな頃ぶりの抱擁。

 けれど、あの頃よりもずっと力強い抱擁に。

 私は嬉しいやら照れくさいやらで、唸りつつ、抱き締め返した。


 END.




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