貴女が喜んでくれていることが(百合。真面目×自由人。馨×ミイ)
ひとつ前の続き。馨くんサイド。
「ただいまー」
「おかえりなさい」
ミイさんの帰って来る物音と共に、スマホから顔を上げた。読んでいた小説にブックマークを付ける。
リビングダイニングに入って来た彼女は、
「ふっふっふー」
と笑いながら、何処か得意げな顔をしていた。可愛い。
ごそごそとエコバッグの中を探っていることから、何か良いものが買えたのかも知れないと思った。
ミイさんが欲しいものを買えたのなら、自分も嬉しい。
その様子を微笑ましい気持ちで眺めていたら。
「見て見て、じゃーん!」
「! 半田麺!」
何と彼女が取り出し、掲げて見せてくれたものは、半田麺だった。
頬が緩んだのが、自分でもわかった。
だってそれは、私の大好物だから。
つるつるもちもちで、とても美味しい。
綺麗な箱に入ったそれが、輝いて見えた。
「どうしたんですか? それ、ちょっといいやつですよね」
「へっへー。スーパーで四国特集してて売ってた!」
「なるほど」
差し出された箱を「わー」と声を上げながら受け取る。
ずしっとした重さに心が震えた。
「馨くん、喜ぶだろうなって思って」
ミイさんが、ニコッと笑みを深める。そう言う本人の方が、よほど嬉しそうで。
「!」
私の心臓が、キュンと甘く鳴った。頬が熱い気がする。胸いっぱいに、嬉しさと愛おしさが広がった。
私が喜ぶことを、自分のことのように喜んでくれる。そのことが。
「……ありがとうございます」
どうしよう。こんなにも嬉しい。
「どういたしまして」
ピースサインをするミイさんは、無邪気な子どものようでたまらなく愛おしかった。
こんなに素敵な人が恋人だなんて。
私は、本当に倖せ者だ。
「今日は、ミイさんが良ければ半田麺にしましょう。私、茹でます」
「いいの? 今日は私が当番なのに」
「もちろん」
ちなみに温野菜と蒸し鶏を作る予定だった、とミイさんが言う。
ああ、それなら。
「せっかくなので、温野菜と蒸し鶏も作っちゃいましょうか」
「んー、だったら二人で一緒に作ろう」
「喜んで! じゃあ特製・梅ごまだれ作りますね」
これはきっと、温野菜にも半田麺にも、どちらにも合う。それに何より。
「! やったぁ」
ミイさんの好きなたれだから。
そうして一緒に作った晩ご飯は、ちょっと豪勢で、そしてとても美味しかった。
END.




