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百花繚乱~一日一作短編集~  作者: 飛鳥井 作太


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秋きぬと目にはさやかに見えねども(同棲百合。恋人と姪っ子と三人暮らし)

 秋が来たな、とわかることがある。

「……邪魔」

「えー、そう言わずにさぁ」

 朝。朝食の用意をしていると、後ろから美雨が抱き着いて来る。

「何か今朝、寒くない? 温もりが欲しくてさぁ」

 そんなことを言いながら、私の背中で暖を取り始める。

「いい加減、半袖じゃないもん着ろ」

「長袖だとまだちょっと暑いのよ」

「お前のやつ、全部厚手だからだろ。薄手のやつ買え」

「でもあれって着られるの、一瞬じゃない? 勿体なくって」

 こんな会話をしていると、秋だなと思う。

 もちろん、しんと冷えだした空気や、光が薄くなっていく様でも感じはするものの。

 一番は、やはりこの、背中の温もりだったりする。

 温まっていく薬缶を、二人でくっつきながらただ眺めた。

「今日の朝ご飯なーに」

 休日だからか、美雨の口調ものんびりしている。顎を乗せられた肩が擽ったい。

「昨日買ったパンとスープ。あと紅茶」

 テーブルロールが安くなっていたので買っておいた。

 美雨も小牧も、テーブルロールが好きだから。

 ちなみにスープは、粉末のコーンスープだ。これは三人全員が好きなクルトンの入ったもの。

「やったぁ」

 ジャムを出しとくか、と冷蔵庫の方へ移動する。もちろん、背中のこいつも一緒について来る。

「りんごジャムも出してー」

「自分で出せ」

「はぁい」

 私は小牧用のみかんジャムを取り、美雨が自分用にりんごジャムを取った。

 大きさの違う瓶なので、ドア側と正面とで置き場所が分かれているのだ。

「櫻子ちゃん、美雨ちゃん、おはよう」

 入口から声がかかって、二人して振り返る。

 そこには、姪の小牧が寝ぼけ眼で立っていた。

「おはよう! 小牧ちゃん」

「おはよう」

 くっついている私たちを見て、小牧がにっこり笑みを浮かべる。

「ふふ、秋だ」

「? 何が?」

 ああ、この子もその認識なのか、と思うとこそばゆかったが、悪い気はしなかった。

「今日の朝ご飯なぁに?」

「今日はね、何とテーブルロールだよ!」

「やった!」

 先程の会話を、今度は美雨と小牧がくり返している。

 私越しに楽しそうに笑い合う二人は可愛らしかったが。

「ほら、小牧。顔洗ってきな。お前も、スープ作れ」

 そろそろ本格的に準備をしようと、美雨を剥がし、小牧を急かした。

 三人のお腹が、同時にぐうと鳴いたので。

「はぁい」

「仕方ないなー。……あ、今日でスープ無くなっちゃう。また買っとかないと」

「ん、メモしとく」

 スープを取り出し、カップを三人分並べる彼女を見ながら。

 背中が少し寒いな、と感じてしまった自分に苦笑した。


 END.


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