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百花繚乱~一日一作短編集~  作者: 飛鳥井 作太


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201/241

触れる手とキスが、ただただ(百合。真顔系クール女子×ダイナマイトマッスルボディ高身長女子)

 洗い物の途中。

 のしっ、と。

「!」

 背中に重みを感じた。

「大社《おおこそ》ぉ?」

 後ろから回された腕が、私の腰をしっかりと捕らえる。

「なに?」

「いや、それはこっちの科白なんですけどぉ」

「別に、ただ確認してるだけ」

「何の?」

「身体」

「どういうこと?」

 彼女はそれ以上何も語らず、ただ私の身体に手を這わせていた。

 と言っても、そこにあまり艶っぽい雰囲気は無く。

 ペタペタとあちこち触って、本当に『確認』作業のようだった。

 私もそれ以上はツッコまず、皿洗いの作業に戻る。

 ざあざあと水を流し、食器の泡を落としていく。

 その間も、彼女の手は、私の腹筋を数えるように動いたり、かと思えば上腕二頭筋をなぞったり、下胸を不思議といやらしくなく触れて行ったりなど、自由に動いていた。

 彼女の頬が背中にくっついて、まるで私の心音をも確認しているかのようだった。

 ……何かあったのか、とは感じたけど、何も聞かなかった。

 言いたければ言うだろうし。言いたくなければ言わないだろう。

 大抵、後者のことが多い。

 話くらいは聞くのにと少し寂しく思いながらも、しかし実際聞くだけで終わりそうだ。

 こうして黙って好きに私の身体に触れて何かが落ち着くのなら、そっちの方がいいかも知れない、とも思う。

 いや、本当に何かあったとか、凹んでいるとかなのかも、全然わからないからアレだけど。

「伽羅《きゃら》」

「なぁに」

 すべての食器を洗い終え、水道を閉めた。

 と同時に、大社の方へ向き直る。

 彼女を見下ろせば、いつも通りの真顔が私を見上げていた。

 ……そこに多少の疲れが滲んで見えるのは、私の考え過ぎだろうか。

「伽羅」

 もう一度私の名前を呼び、私の頬に手を伸ばす。

 私は大人しくされるがまま、引き寄せられるがままに彼女とキスをした。

 触れるだけのキスを一つ、二つ。最後に追いかけてもう一つキス。

 間近で目が合う。

 条件反射で、私は笑ってしまう。

 だって、ねえ?

 やっぱり嬉しいじゃない、恋人とキスするのってさ。

 私の反応に、大社は微かに目を見開くと、

「伽羅」

 すぐにその目元を柔らかく綻ばせた。

「なぁに」

 もう一度答える。

「本当にお前は可愛いなあ」

 脈絡もなく、突然しみじみとそう言われ、私は嬉しいやら照れ臭いやらで、口元を手で隠そうとした。

 が、その手を取られ、もう一度、

「可愛いなあ」

 としみじみ、それでいて今度は悪戯っぽく言われる。

「何なの」

「恋人を褒めちゃいけない理由でも?」

「無いねぇ」

「だろ?」

 結局、彼女がどういう思惑で私に触れていたかは、わからなかったものの。

「伽羅」

 声の調子が先程より元気になっていたし、また迫られたキスが嬉しくて、何でも良くなってしまった。


 END.


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